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信頼できる情報とは

カテゴリ: ビジネス・仕事 作成日:2016年11月16日(水)

大方の予測を裏切ってトランプ大統領が誕生し、連日新政権の情報が報道されています。しかし、特にこのような政治に関する情報を読む際には、その情報が「どれだけ信頼できるか」について十分な注意が必要です。

 

投資銀行(に限らず、情報を扱うプロフェッショナルなサービスではいずれでも同じと思いますが)では、「その情報が信頼に足るか」「信頼できると判断する(もしくは判断を留保する)のであれば、その根拠は何か」という点について、慎重な検討が求められます。また、IT企業で営業を担当していた際は、「情報を誰に確認したか」「情報の確度は高いか」が常に問われました。ビジネスで信用に足るコミュニケーションをとるには、いずれも重要なことです。このような経験と、私の個人的な考えから、信頼できる情報には大きく二種類があると考えています。

 

第一は、ファーストハンドの情報です。例えば、A氏の考えが知りたければ、最善の方法はA氏に直接確認することです。A氏への直接のコンタクトが難しければ、知りたい件に直接関わりA氏とやりとりする事情に明るい人物に確認することが次善の策になります。ファーストハンドの情報を得るためには、対象となる相手と信頼関係を築いている必要がありますし、また知りたい件についての文脈を理解している必要もあります。

 

第二は、因果関係への理解と過去のファクト・データや経験に基づく、優れた推論です。ハーバードビジネススクールのクリステンセン教授の「イノベーション・オブ・ライフ」に、(本の趣旨のキャリア論や人生論とはまったく関係なく)以下の一節があります。

 

「理論とは『何が、何を、なぜ引き起こすのか』を説明する、一般的な言明だ。(中略)半導体市場での競争とテロリズムの世界的な広がりは、表面的には似ても似つかない問題のように思われる。だが実は、置かれた文脈が違うだけで、基本的には同じ問題なのだ。優れた理論の助けがあれば、分類と説明が、そして最も重要なことに、予測が可能になる。」

この指摘には目を見開かされました。マーケットのコメントにせよ、政治の解釈にせよ、ビジネスの分析にせよ、優れた解釈とは、過去の事実と結果があり、その因果関係を理解しており、それを現在の事実に適用して優れた見方や見通しが示されることを意味しています。優れた解釈を示すには、あるエリアの出来事を時間をかけて経験・咀嚼し、因果について考え抜く積み重ねが必要です。それが、ある分野のプロと呼ばれる人たちです。ファクトと因果への向き合い方には人により異なるスタイルがありますが、一例として、投資、政治、ビジネスのいずれの分野においても、歴史の探求に向かう優れた人々がいるのは、歴史がファクトと因果への思索の宝庫だからでしょう。

 

私たちは、世の中のすべての事象について直接知ったり専門家になることはできません。したがって、この二つの点で、「信頼できる」と感じられる人を見つけ、その人たちが発信する情報を追うことによって、信頼できる情報を入手し、考えていくことができます。(ちなみに、因果ではなく相関でものごとを語ることもできます。しかし、相関は大いに参考になるものの、因果がわからなければ相関が崩れる場合を見抜けない点に注意が必要です)

 

上記を踏まえれば、例えば「トランプは不動産で成功してきたビジネスマンなのだから、大統領としても現実的な判断をするはずだ」という説明は、ただの憶測で、井戸端会議の域を出ないことがご理解いただけると思います。政権移行チームからの直接の情報でなければ、少なくともトランプの考えや性格を身近でよく見てきた人か、もしくは現在のトランプ、共和党、米国が置かれている政治的なポジションを社会的経済的な文脈から分析できる人が、傾聴に値する情報を発信できる人だと考えます。

 

そして、これらに該当する人は、世界的にほとんどいないようです。世界中の専門家が予想を外し、トランプが本当に何を考えているかはほとんどの人がわかっていないからです。トランプ後のマーケットのラリーも、このような「わからない」状況が前提にあることに留意が必要です。しかしこのように考えてみると、マーケットや企業は、数字で結果が出るため、まだ与しやすいですね。政治や社会はあいまいな人間の世界なので、信頼に足る情報の取得や現状の認識も容易ではないと感じてしまいます。