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やっぱり戦略の実務の名著~『企業参謀(新装版)』

カテゴリ: 書籍など 作成日:2017年01月05日(木)

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今日、戦略コースの開発について打合せをするため、久しぶりに大前研一氏の『企業参謀』を読み返しました。

 

私がこの本を買ったのはいまから約10年前に、ITの営業をやっていた時です。当時は、あまりピンと来なくて読了することができませんでした。投資銀行の駆け出し時代は忙しくて読む時間と気力がとれず、はじめて本書を読み切ったのは留学中です。その時は、まだ自分で(小さいものであっても)事業の全体像を考え抜くという経験がほとんどなかったので、投資銀行での企業買収の経験を踏まえて含蓄の深い本だなとだけ思った記憶があります。そして、今回です。

 

私は、この本の名著たる所以は、企業戦略立案の「実務」の思考のプロセスが的確に深く表現されている点にあると思います。例えば、冒頭の戦略的思考入門という章は、旅行会社のパッケージ商品を「分解して」理解し、自分がどこに対価を払っているのかよく理解することが大事だ、という話から始まるのですが、そのわかりやすさ、あらゆる物事を分析する際に応用できる考え方の射程の広さ、どちらも素晴らしく、久しぶりに読み返して感嘆しました。例えば私が授業でよくお話しする「企業価値を評価する際は、何を前提としているのか、どのようなリスクを自分が受容した結果の評価結果なのか、を必ず理解する」ことも、この旅行会社のパッケージの話の延長線上にありますし、あるいは「長期の目標をいかに日々のタスクに落とし込んで日々の生産性を高めるか」も同じ延長線上にあります。本書では、戦略的思考入門に続いて、企業が戦略を検討する際に必要なプロセスと考え方が丁寧にまとめられており、実務の直接の参考にできます。

 

この本の勿体ない点は、この本の主な対象が経営者や経営企画であるために、扱う内容が「企業全体」「事業全体」の視点中心になっていることです。それが、この本に書かれている「戦略的思考」は多くの人に役立つ内容であるにも関わらず、私が営業マン時代にこの本を読了できず腹落ちさせられなかった理由のひとつでもあるでしょう。例えば、第2章の中期経営戦略計画やPPMの話は、会社全体を見る経験がないとピンと来ないと思われ、そのような役割を担う人はそれほど世の中に多くないと思います。一方で、その次に出てくる製品・市場戦略は、事業に真剣に携わる方であればどなたでも経験年数によらず本来は理解した方が良い内容だと思いますが、ただここだけ取り出しても、エッセンスがわずか17ページに凝縮されているため、やはり営業マンだった自分には理解が難しかったのかなと思う次第です。また、はじめの章にいきなり出てくる使用総資本利益率(ROCE)という考え方は、私が授業で扱うROICですが、これも授業に参加していただく皆さんの反応を見るとパッとは理解できないと思いますので、たまに出てくるこのようなテクニカルタームも本書を読みにくくしている理由のひとつだと思います。

 

とはいえ、少し読み手を選びますが、やはりこの本が名著であることに一点の揺らぎもありません。1970年代に出版された本ということで、ビジネス、あるいは商売の本質というのは、そんなに変わらないのだなということを改めて感じます(たぶん、アリストテレスの時代からそんなに変わっていないのだと思います)。

 

ところで、この本の一番最後(私が読んでいる版はAmazonで参照している版よりも装丁が古いのですが、多分あるはず)に、『附章 先見術 「成功パターン」を透視する必要・十分条件』という短い章があるのですが、これは事業を作るという観点では非常に面白いですね。大事業を生み出す優れた起業家・経営者には予言者のようなところがあり、細かな分析をしているかはともかく、以下の条件を満たしていることが多い、と、著者は書いています(以下、抜粋)。

 

  1. 事業領域の定義が、明確になされている。
  2. (将来の予言ではなく)現状の分析から将来の方向を推察し因果関係について、きわめて簡潔な論旨の仮説が述べられている。
  3. 自分のとるべき方向についていくつかの可能な選択肢のうち、比較的少数のもののみが採択されている。また選択された案の実行に当たってはかなり強引に人、物、金を総動員して、たとえ同じようなことを行っている競争相手がいても時間軸で差が出ている。
  4. 基本仮定を覚え続けており、状況が全く変化した場合を除いて原則を外れない。

 

これらを満たす事業は大成功することがあり、そのようにして事業を成した人を人は「先見の明がある」と言うということです。非常に深く、その通りだなと思う指摘です。 ちなみに、この章の中には、イノベーションのジレンマとまったく同じこともさらっと書いてあります。少し古い本ですが、是非多くの方に読んでいただきたいと思います。

 

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