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仕事における人材育成のアカデミックな理論~『経営学習論』

カテゴリ: 書籍など 作成日:2017年02月13日(月)

 

自分が以前書いたブログを見返したところ、「仕事ができるようになるとはどういうことか?」というテーマについて、何と3回も書いていました。昨年末に教育の専門家の方に当該テーマについて質問した際に、教えていただいた参考書が、中原先生の『経営学習論』です。

 

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この本は、実務家ではなく教育専攻の大学院生を対象に、教科書のような位置づけで書かれています。ですので、全体的に表現は堅めで、読みやすくはありません。しかし、企業と学習の関係について関連テーマが俯瞰できるようにまとめられており、この分野のアカデミックな全体像を理解するにはとても良い本かと思います。

 

私が興味の強い分野は、人が経験を通じてどのように学ぶかをまとめた「経験学習」のセクションで扱われています。嬉しかったのは、経験と概念化を繰り返し経験しながら学ぶ「コルブの経験学習サイクル」というこの分野で著名な考え方が、当社で掲げている「成長のサイクル」の考え方と非常に近しかったことです。私は「コルブの経験学習サイクル」という考え方は知りませんでしたが、これまでに仕事の経験と試行錯誤を通じて確信として抱いていた学びのプロセスについての考えが、理論的にも研究者の間で比較的受容されていることがわかり、とても安心しました。

 

一方で、初めて知って面白いと思ったのは、コルトハーヘンの「ゲシュタルト=スキーマ化=理論化」の3段階モデルです。ドイツ語が出てきて、アカデミックな感じがワクワクしませんか?…という点はどうでもよろしいのですが、「ゲシュタルト」とは、自分の行動に影響を与えているが、自分で言語化ができていない過去の自分の経験です。これを、自らの言葉に落として自らのものとしていくプロセスが「スキーマ化」と「理論化」であるとされています。この感覚は非常によく理解でき、とても興味深いです。このプロセスに取り組むための方法論もあるようなので、時間を見つけて関連書を読んでみたいところです。

 

その他に本書では、人が組織の一員となるプロセス、OJTの構成要素、社外活動の意味などについて包括的に扱っています。人が組織の一員となるプロセス(組織社会化)は、主に学生の就職や新卒研修が扱われていますが、コミュニティの設計などにも役に立つ考え方だと感じました。人と組織の論点が教育の立場から体系的にまとめられており、いずれのパートも大変勉強になりました。

 

ところで、ビジネス・スクールの起ち上げを経て改めて思うこととして、「教育」をテーマに掲げたときに、幼児や小学生を対象とした教育、あるいは中学生~大学生を対象とした教育に強く関心を持つ方は比較的多くいらっしゃるものの、「大人」を対象にした教育に強い関心を抱いていらっしゃる方は圧倒的に少ないということです(むしろ、ほとんどいません)。中原先生も、「子ども」ではなく「大人」を対象とする研究は比較的新しいと述べられています。昔から、「働く」をテーマにした学びに強い関心を持つ自分としては不思議なことなのですが、これはなぜなのでしょう。。大人は…子どもとちがって、かわいくないからでしょうか!?(笑)