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『超一流アナリストの技法』

カテゴリ: 書籍など 作成日:2016年11月21日(月)

 

野崎浩成著、『超一流アナリストの技法』、日本実業出版社、2016年11月

 

本書は、銀行アナリストとして一線で活躍し続けた著者による、「仕事論」と「アナリスト論」です。著者は、一般の幅広い読者層を想定しているようですが、個人的には、金融の関係者で「エッジを立てる」ヒントを探している方や、アナリストの考え方を知りたい方にお勧めの本だと思います。

 

私が読んで特に面白く感じたのは、本書後半の著者の「アナリスト論」です。第5章に記載されたアナリストとしての企業分析とバリュエーションの視点は、教科書的な記載にとどまらず顧客(投資家)への説明力との関係が詳述されており、大変面白いです。アナリストの考え方は、ファンダメンタルズに寄りがちな投資銀行のバンカーよりもマーケットに近く、かといって実際に投資によりリターンを上げることではなく投資のアイデアやユニークな分析を顧客に提供することに重きを置いているため適度に分析的で、マーケットの見方への示唆に富みます。デュポン・システムの「オリジナル」版を作るという発想は、マーケットの「ジャーナリスト」のような立ち位置であるアナリストならではでしょう。ただし、説明がかなりシンプルなため、バリュエーションが一通り分かった上で読まないと著者の考えを理解するのは難しいと思います(詳細は別の著書で解説されているのかもしれません)。また、著者が強調する資本コストの重要性には同意しますが、その強調の強さは、資本コストが実際の経営に大きな影響力を持つ金融機関を担当してきた銀行アナリストという著者のバックグランドが関係あるのではないかと思いました。
 
第6・7章に詳述された、「優れたアナリストとは」(あるいはアナリストとして生き残るためのアドバイス)の見解も、大変面白いものです。例えば、266頁に記載された「アナリストのリテンションレポートやイベントに対するコメントのレベル」という図表を見て、過去に自分が触れたアナリストレポートを思い返してみれば、面白いレポートとそうでないレポートの差がクリアに整理できます。「逃げるのは失格」という一節がありますが、リスクをとってポジションをとることの重要性と、ポジションが外れた場合の反省の重要性は、形のない言葉のビジネスに携われた方であれば強く頷くところではないでしょうか。
 
この2章に記載された「優れた仕事」の考え方は、アナリストだけではなく、メディアや調査など「情報発信」という仕事に対して、かなり等しく当てはまります。私にとっても、自分の強みや、できていることできていないことを見直すとても良い機会になりました。基本は金融がテーマなので金融関係の方に参考になると思いますが、広く情報発信や形のないコンサルティングを手掛ける方にも参考になるかもしれません。
 
ちなみに、著者によると、アナリストは目立つため、個人投資家による賞賛や中傷がネット上に溢れることがあるそうです。著者のアドバイスは、「こうしたノイズに耳を貸すと、心は簡単に粉砕されてしまいます。アナリストになったら、ヤフーファイナンスの掲示板などはあまり見ないほうが良いでしょう」。アナリストという非常にタフな仕事で評価にさらされ続けてきた著者ならではの、アドバイスだと感じました。