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仕事ができるとは&キャリアを考えるメッセージ

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年12月28日(木)

 

2017年も終わりを迎えようとしています。世界的に好景気でマーケットも盛り上がったものの内向く米国と大国の地位を盤石にする中国を起点に政治経済の枠組みが大きく転回しはじめた2017年、テクノロジーによるイノベーションは継続する一方で寡占化したインターネット企業や一部のテクノロジー企業が引き起こす社会問題の大きさやその傲慢さに焦点が当たった2017年、そして日本においては働き方改革や人生100年など唐突に「生き方」がクローズアップされた2017年でした。

 

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プリンシプルズとしては、これまでに累計で70名を超える方にさまざまなコースを受講いただき、やっと事業の船出ができたと言える一年でした。この記事では、年末年始に皆さんが将来のことを考えるにあたって参考になりそうな内容として、私が教えながら感じた「仕事が『できる』とはどういうことか」を少し紹介させてください。

 

まず、深く考えられるか

仕事ができる第一の要件は、深く考えられることだと思います。同じものを見ていても、深く考えて物事の本質に辿りつける人とそうでない人では、感じられることと見通せるものが違います。思考の深さの差は、何気ない一言にも表れ、周囲の人は何となくそれを感じることができます。業界の重鎮の〇〇さんの発言に説得力があるのは、タイトルと年季だけではなく、その一言に思考の深さによる裏打ちが感じられるから(のはず)です。

 

教えながらわかったのは、「深く考えられない人」は「自分が深く考えられていないことに気づけない」ということです。特に、戦略を教えた際にこれを痛感しました。例えば、「自分は顧客にどのような価値を提供しているか」「他社(や他者)とどのように差別化しているか」は、戦略と大げさに呼ばなくても、仕事で誰もが考えなければならない内容です。しかし、私が「まだ思考が浅く本質に辿り着けていない」というニュアンスで(具体的な)コメントをしても、それが伝わる方と伝わらない方がいます。伝わらない方は、そこで思考をやめてしまうので、思考の深掘りができません。もちろん、これは私自身のコメントの未熟さもあり、修行が必要と痛感しているところですが、「指摘されてもわからない人がいる」という感覚は新鮮な学びでした。本を読んでも仕事ができるようになるわけではないのも、同じ理由なのでしょう。読んでわかったような気になることと、本当にわかることの間には大きな差があるのです。

 

かく言う私も、自分自身で深く考えられていないことを痛感した一年でした。私の提供する教育プログラムは質と効率において際立っていると自負しています。なぜ質と効率が高いかについて方法論の根拠もあります。しかし、それは顧客(個人や会社)にとって私のプログラムを受講する直接の理由にはなりません。自社は〇〇に優れており他社と差別化できている、と思い込むことは、忌むべきプロダクトアウトの発想であり、顧客の課題を解決するマーケットインの発想になっていません。先日、ある著名な戦略コンサルティング会社の資料を見る機会がありましたが、その内容は理路整然と美しいプロダクトアウトの論理の塊でした。マーケットインには人間への深い理解と洞察が欠かせません。顧客の立場に立って考えるということが、いかに言うは易く行うは難しであるか、深く感じさせられた一年でした。

 

そして、想像力

仕事ができる第二の要件は想像力です(深く考えられることと想像力はきれいに分けられるものではありませんが)。なぜ〇〇が生じているのか、表面に出てこない理由を考えるにあたっては、見えない物を見る想像力が必要になります。今後何が起きるのか、優れた政治家がカレンダーを何か月も先まで掲げているのは、日程を見ながら将来起きることを想像しているのです。

 

ひとつ、質問をさせてください。会計に触れたことがなく数字が苦手だがさまざまな会社へ営業の経験がある40歳のAさんと、有名大学を卒業して大手企業の企画部門で働く25歳のBさんで、どちらの方がビジネスの現場で会計を「活用できる」ようになりやすいと思いますか。(私の教えた経験に根差しますがどちらも特定の人を指すわけではありません!)。

 

私見では、どちらかと言うとAさんの方が会計を活用できるようになりやすいです。面白いことに、両者は得意不得意が異なります。会計の考え方やルールを理解して問題を解けるようになるスピードは、Bさんの方が早いです。優秀な若者は、勉強も得意で、ひととおりのことをすぐにできるようになります。これから会計士を目指すならBさんの方がずっとハードルが低いでしょう。しかし、ある会計の数字を見た際に、その数字が何を意味するかをより考えられるのは、実はAさんです。なぜなら、Aさんは、さまざまなビジネス、さまざまな顧客とこれまでに接点を持ってきたので、想像力が豊かだからです。Aさんは計算はよく間違えますが数字を見ながらアイデアをポンポンと出します。Bさんは計算はすぐにできますがアイデアは多く出てきません。計算は多少練習すれば誰でもできるようになりますが想像力はすぐには育めません。ですので、Aさんの方が会計を「使えるようになる」スピードは早いです。

 

想像力とは、夢想することでは必ずしもありません。さまざまな現場を実際に見たり経験したりし、過去の経験と新しい課題を結びつけて連想できることが一般に多くを占めます。したがって、想像力を高めるには考える経験を多く積むだけでなくさまざまなビジネスあるいは人生経験を多く積むことが必要です。仕事に直接関連するという意味では、実際にいろいろな仕事をやってみることに勝るものはありません。一方で現場がある程度わかれば、本などから得られることも多くなります。

 

年末にHISの沢田会長兼社長が3ヶ月から半年間の世界旅行に出るというニュースがありました。

HIS社長、格安?一人旅へ 3-6カ月世界巡る 「刺激受けたい」「部下が育つ」(西日本新聞)

“一人旅の理由について、沢田氏は西日本新聞の取材に対し「最近は自分の発想が豊かでなくなった。世界の変化から刺激を受けたい」と説明。”

 

この感覚はよくわかります。私は、自分が取り組んでいる教育事業について想像力を働かせる上で必要な経験は過去の仕事や留学を通じて相応に積めていると考えています。しかし、パソコンと向かい合う時間がどうしても長くなりがちなので、意識して人と会ったり本を読む時間をとるようにしています。もう少ししたら、たまには海外をフラフラしないとなあと思うでしょうね。

 

さらに、実行力

私は、深く考える力と想像力が仕事をする上で最も重要だと思います。なぜなら、世の中の多くの実行は準備をともなうもので、準備ができていれば実行は「やる気」があればできるからです。

実行の仕方にもいろいろと技術がありますが、実行にあたってはスピードも重要です。本年の私の反省点のひとつは、事業のスピードがあまり出なかったことです。理由はいろいろとありますが、「これは明日やろう...」の小さな積み重ねが大きなスピードの差につながってしまった側面があります。反省しきりです。

 

自分が得意で長く続けられることは

さて、最後に将来の生き方やキャリアについて考えている方にメッセージです。

 

まず、何かを深く追うには時間がかかるということをお伝えしたいです。最近は、とにかく新しいものを経験してみよう、これまでの経験を捨て去ろう、というコメントが多く見られます。しかし、ホームベースなく外に出ていったら、想像力が高まるよりも根無し草になる危険の方が高いです。

 

先日、海外M&Aをテーマにした日本電産の永守会長兼社長の講演を拝聴する機会がありました。講演は大変素晴らしい内容でしたが、今回のテーマとの関連では、冒頭のコメントが大変印象に残っています。

 

「私は1973年に京都の自宅で日本電産を従業員3人で創業してちょうど45年になります」

 

この時、ああ、永守さんは今の日本電産を育てるのに45年かかったんだな、自分は現在やっていることを何年できるかな、と思いました。60代半ばまでならあと30年はできる。35年はできるだろう。しかし45年はどうだろうか。そのように思いました。

  

 

さすがに30年40年の時間軸で考えるのは一般には長すぎるでしょうが、申し上げたいのは、考える力にせよ、想像力にせよ、そこには考え抜きやり抜いた経験の蓄積が必要であり、それは一朝一夕には身につかないということです。何の高みを目指すかは自分で選ぶしかありませんが、人生のどこかで何を目指すか決めて時間をかけていただきたい。特に、いろいろなことに目移りしがちな若い方にはこの点を強く申し上げたいと思います。ただし、大企業で内向きの仕事を長年続けても世の中に役立つ軸を育てることはできません。自分はいったい何の山を登っているのか意識することは非常に重要です。

 

もうひとつは、人間には結局のところ向き不向きや好き嫌いがあるということです。私は、人間の能力や成長というテーマに深い関心があります。そのため、教える仕事に取り組んでいて飽きることがなく、飽きないから続けることができます。また、自分は何より得意なことは深く考えわかりやすく伝えることで(ビジネスの池上彰を目指せと言われることもあります笑)、大量の情報を早く処理するのは得意ではありません。投資銀行の現場で私は一線で働いてきましたが、コンサルティングや投資銀行のような世界ではどうしても大量の情報を早く処理することが求められます。やってできないことはないのですが、疲れますし、その点においては業界に秀でている人が多くいます。ですが、彼ら彼女らは深くわかりやすいかと言えばその点は私に強みがあります。だから、私は世の中の事象から一歩引いて考え教える仕事を始めました。

 

若い間は、自分の可能性を拡げるハードワークに時間を使うこともよいでしょう。しかし、中堅を過ぎたら、自分が得意で長く続けられることに時間を使うのが長い目で見た時に活躍と幸せにつながると思います。それは、大企業やスタートアップといった軸ではなく、仕事の内容と生き方の話です。私の友人知人でも、2017年は新たな仕事を始めた方が多くいました。30代半ばというタイミングがひとつの理由かもしれません。

 

何の山を登るか、何であれば自分は得意で長く続けられるか。それに向き合うことこそが、人生において仕事に向き合うことかなと思います。それから、考えすぎるのも考えもので、本当にモヤモヤするなら実行に移してみることをお勧めします。

 

本年も大変お世話になりました。皆さま良いお歳をお迎えください。

 

藤波由剛

 

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