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なぜマネージャーには抽象的な思考力が求められるか

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年08月03日(木)

 

前回は、「考え方」を学ぶこと、「考え方」を指導することの重要性について触れました。今回は、このテーマに関連し、なぜマネージャーには抽象的な思考力が求められるかを説明します。

 

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「あ、そうか!」とひらめく瞬間、ありますか?

 

抽象的に考えられなければ指導ができない

ある営業部長の方から聞いた話をご紹介します。その方には、営業として優秀な部下がいました。しかし、その部下をマネージャーに昇格させることは難しく、営業部長は悩んでいらっしゃいました。なぜなら、その優秀な営業担当者は、論理的に考えることができなかったからです。

 

彼は営業としては優秀で顧客にかわいがられる「才能」を持っていました。ですので、営業成績は良かったそうです。しかし、上司への報告はいまいち不明瞭で何が起きているのか聞いてもよくわからないことがあり、教育との関係では後輩の指導がうまくできないということでした。なぜなら、自分がやっていることや考えを、論理的に後輩に伝えることができないからです。

 

ここで、「論理的に考えて伝えることができない」という課題には、ふたつの要素が含まれています。ひとつは、結論と理由をセットで適切に論証をすることができないという「論理力」の問題。もうひとつは、自分が実際にやっていることを一段高い視点からまとめること、考え直すことができない「抽象的思考力」の問題です。ここでは、後者をもう少し見てみましょう。

 

抽象と具体の思考のレベル

「抽象的に思考する」という表現は、抽象的でわかりにくいですので、具体例をあげます。例えば、Excelに数字を打ち込む際は右揃えでの表示が基本です。右揃えでなければパッと見た時に桁数をつかみにくいからです。Excelを普段使わない方でも、銀行通帳の記帳やインターネット・バンキングの画面などをイメージすればすぐにご理解いただけると思います。

 

では、後輩がExcelで数字を「中央揃え」で縦に順番に入力していた場合、どのような指導が考えられるでしょうか。

 

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違いは一目瞭然です

 

最も具体的な指導は「数字は右揃えで入力するように」です。これは、作業レベルの指示です。これに「なぜか」と理由を付け加えるわけですが、以下のレベルが考えられます。

 

1)右揃えにしなければ、桁がわかりにくいから

2)上記に加えて、人間はそろっている情報を無意識にひとかたまりの情報と捉えるので、相手に伝わりやすいから

3)上記に加えて、人間はわかりやすい情報に無意識にポジティブな感覚を持つので、数字で主張したいことが相手に承認されやすいから

 

上記の説明はいずれも本当ですので、いずれの説明をすることもできます。そして、読んでいただくと、1)から3)にかけて説明が抽象的になっていることがわかります。1)は非常にわかりやすいですが、2)はデザインの考え方で、3)は心理学の考え方です(もう一歩踏み込むと脳科学の領域ですが、そこまでは触れません)。これらはいずれも、「なぜ」という考え方を説明しています。

 

ここで理解いただきたい点は、どの考え方のレベルまで理解するかによって、応用の範囲が異なることです。1)は数字を資料にまとめる時にしか使えない考え方ですが、2)は資料作成一般に応用できますし、3)はさらに広くプレゼンテーションや日々のコミュニケーションの取り方、さらには服装のコーディネートにまで応用できる幅広い概念です。

 

優れたマネジメントになるためには抽象と具体の往復が求められる

教えるにせよ、自分の仕事に活かすにせよ、まずはこのような抽象的な考え方をできなければ、優れたマネージャーになることはできません。それは、ある時は自分の経験から考え抜くことです。例えば、異なる経験から共通して得られる教訓や、似ているけれども異なる結果を生んだ経験から何が差だったかを考えることは、自分の経験から一歩抽象的な考え方を引き出すことに他なりません。また、本や教育から学ぶこともできれば、友人との会話から考え方のインスピレーションを得ることもできます

 

ただし、本や教育などで学んだ考え方を実務で使う場合には、抽象的な考え方だけではだめで、それが具体的にどのように仕事あるいは作業に落とせるのか、具体的にイメージできなければなりません。具体化に自ら試行錯誤することで、本や教育から「借りてきた」考え方を自らのものとすることができます。そして、自らの具体的な経験と抽象的な考え方を往復することで、自分なりの「考え方」が出来上がっていきます。

 

指導という観点では、自分が考え方を理解した上で、相手に伝わるレベルで考え方を伝えることが重要です。新卒社員には「数字は桁が揃っていないとわかりにくいから右揃えにするのだよ」という指導で十分ですし、それ以上を伝えてもピンと来ないかもしれませんが、資料作成をバリバリこなす社員であればデザインの考え方まで知っておいてもらいたいところです。

 

また、ビジネスをリードするという意味では、日々の仕事をこなすフィールドから、自ら仕事を作り出したり仕組みを考えたりするフィールドに移るには、このような抽象的な思考が求められます。そして、優れたビジネスパーソンは、抽象的に本質を突くことが得意で、社会・経済の動きや異業種の動きから将来を予測し、自社のビジネスにヒントを得ることができます。

 

抽象と具体の往復は筋トレのようなもの

自分の場合、若い頃はどちらかと言えば抽象的な思考に考え方が偏っていました。それは大学で政治という「大きな」テーマばかり追いかけていたからかもしれません。逆に、新卒での法人営業は現場がすべての仕事でした。その後、投資銀行で企業分析や交渉を、現在は自社の経営を経験し、これらすべてのおかげで、今では抽象から現場まで一貫してイメージする力がかなりついたと思います(営業の現場経験も現在の自分に至る道のりで非常に重要であったことをここで強調したいと思います)。抽象と具体の往復は筋トレのようなもので、キャリアのマラソンを通じてずっと高めていかなければならないものなのでしょう。

 

最後に、今回のテーマと教育・研修の関係に触れます。「どのレベルの考え方で相手とコミュニケーションをとるべきか」は、相手の思考レベルによるため、本来は相手によって指導の仕方を変えることが望ましいです。優れたオン・ザ・ジョブ・トレーニングはそのような師弟関係です。しかし、多数の受講生がいる教育・研修では、さすがにテーラーメードのコミュニケーションをとることはできません。したがってポイントは、いかに受講生のレベルを合わせて最大公約数をとりやすくするか、いかに受講生にとって「ちょうど良い」思考のレベルで考え方を伝えるか、です。作業レベルの教育は広がりに欠け、脳科学の話は実務から遠すぎます。ここでどのようなレベル選択するかは、教育を設計する側の対象への理解度とアートなセンスが問われる部分です。ですので、同じテーマで教育・研修が企画されても、内容が同じということはあり得ません。設計者により、内容は間違いなく大きく異なります。

 

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