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仕事ができるとは&キャリアを考えるメッセージ

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年12月28日(木)

 

2017年も終わりを迎えようとしています。世界的に好景気でマーケットも盛り上がったものの内向く米国と大国の地位を盤石にする中国を起点に政治経済の枠組みが大きく転回しはじめた2017年、テクノロジーによるイノベーションは継続する一方で寡占化したインターネット企業や一部のテクノロジー企業が引き起こす社会問題の大きさやその傲慢さに焦点が当たった2017年、そして日本においては働き方改革や人生100年など唐突に「生き方」がクローズアップされた2017年でした。

 

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プリンシプルズとしては、これまでに累計で70名を超える方にさまざまなコースを受講いただき、やっと事業の船出ができたと言える一年でした。この記事では、年末年始に皆さんが将来のことを考えるにあたって参考になりそうな内容として、私が教えながら感じた「仕事が『できる』とはどういうことか」を少し紹介させてください。

 

まず、深く考えられるか

仕事ができる第一の要件は、深く考えられることだと思います。同じものを見ていても、深く考えて物事の本質に辿りつける人とそうでない人では、感じられることと見通せるものが違います。思考の深さの差は、何気ない一言にも表れ、周囲の人は何となくそれを感じることができます。業界の重鎮の〇〇さんの発言に説得力があるのは、タイトルと年季だけではなく、その一言に思考の深さによる裏打ちが感じられるから(のはず)です。

 

教えながらわかったのは、「深く考えられない人」は「自分が深く考えられていないことに気づけない」ということです。特に、戦略を教えた際にこれを痛感しました。例えば、「自分は顧客にどのような価値を提供しているか」「他社(や他者)とどのように差別化しているか」は、戦略と大げさに呼ばなくても、仕事で誰もが考えなければならない内容です。しかし、私が「まだ思考が浅く本質に辿り着けていない」というニュアンスで(具体的な)コメントをしても、それが伝わる方と伝わらない方がいます。伝わらない方は、そこで思考をやめてしまうので、思考の深掘りができません。もちろん、これは私自身のコメントの未熟さもあり、修行が必要と痛感しているところですが、「指摘されてもわからない人がいる」という感覚は新鮮な学びでした。本を読んでも仕事ができるようになるわけではないのも、同じ理由なのでしょう。読んでわかったような気になることと、本当にわかることの間には大きな差があるのです。

 

かく言う私も、自分自身で深く考えられていないことを痛感した一年でした。私の提供する教育プログラムは質と効率において際立っていると自負しています。なぜ質と効率が高いかについて方法論の根拠もあります。しかし、それは顧客(個人や会社)にとって私のプログラムを受講する直接の理由にはなりません。自社は〇〇に優れており他社と差別化できている、と思い込むことは、忌むべきプロダクトアウトの発想であり、顧客の課題を解決するマーケットインの発想になっていません。先日、ある著名な戦略コンサルティング会社の資料を見る機会がありましたが、その内容は理路整然と美しいプロダクトアウトの論理の塊でした。マーケットインには人間への深い理解と洞察が欠かせません。顧客の立場に立って考えるということが、いかに言うは易く行うは難しであるか、深く感じさせられた一年でした。

 

そして、想像力

仕事ができる第二の要件は想像力です(深く考えられることと想像力はきれいに分けられるものではありませんが)。なぜ〇〇が生じているのか、表面に出てこない理由を考えるにあたっては、見えない物を見る想像力が必要になります。今後何が起きるのか、優れた政治家がカレンダーを何か月も先まで掲げているのは、日程を見ながら将来起きることを想像しているのです。

 

ひとつ、質問をさせてください。会計に触れたことがなく数字が苦手だがさまざまな会社へ営業の経験がある40歳のAさんと、有名大学を卒業して大手企業の企画部門で働く25歳のBさんで、どちらの方がビジネスの現場で会計を「活用できる」ようになりやすいと思いますか。(私の教えた経験に根差しますがどちらも特定の人を指すわけではありません!)。

 

私見では、どちらかと言うとAさんの方が会計を活用できるようになりやすいです。面白いことに、両者は得意不得意が異なります。会計の考え方やルールを理解して問題を解けるようになるスピードは、Bさんの方が早いです。優秀な若者は、勉強も得意で、ひととおりのことをすぐにできるようになります。これから会計士を目指すならBさんの方がずっとハードルが低いでしょう。しかし、ある会計の数字を見た際に、その数字が何を意味するかをより考えられるのは、実はAさんです。なぜなら、Aさんは、さまざまなビジネス、さまざまな顧客とこれまでに接点を持ってきたので、想像力が豊かだからです。Aさんは計算はよく間違えますが数字を見ながらアイデアをポンポンと出します。Bさんは計算はすぐにできますがアイデアは多く出てきません。計算は多少練習すれば誰でもできるようになりますが想像力はすぐには育めません。ですので、Aさんの方が会計を「使えるようになる」スピードは早いです。

 

想像力とは、夢想することでは必ずしもありません。さまざまな現場を実際に見たり経験したりし、過去の経験と新しい課題を結びつけて連想できることが一般に多くを占めます。したがって、想像力を高めるには考える経験を多く積むだけでなくさまざまなビジネスあるいは人生経験を多く積むことが必要です。仕事に直接関連するという意味では、実際にいろいろな仕事をやってみることに勝るものはありません。一方で現場がある程度わかれば、本などから得られることも多くなります。

 

年末にHISの沢田会長兼社長が3ヶ月から半年間の世界旅行に出るというニュースがありました。

HIS社長、格安?一人旅へ 3-6カ月世界巡る 「刺激受けたい」「部下が育つ」(西日本新聞)

“一人旅の理由について、沢田氏は西日本新聞の取材に対し「最近は自分の発想が豊かでなくなった。世界の変化から刺激を受けたい」と説明。”

 

この感覚はよくわかります。私は、自分が取り組んでいる教育事業について想像力を働かせる上で必要な経験は過去の仕事や留学を通じて相応に積めていると考えています。しかし、パソコンと向かい合う時間がどうしても長くなりがちなので、意識して人と会ったり本を読む時間をとるようにしています。もう少ししたら、たまには海外をフラフラしないとなあと思うでしょうね。

 

さらに、実行力

私は、深く考える力と想像力が仕事をする上で最も重要だと思います。なぜなら、世の中の多くの実行は準備をともなうもので、準備ができていれば実行は「やる気」があればできるからです。

実行の仕方にもいろいろと技術がありますが、実行にあたってはスピードも重要です。本年の私の反省点のひとつは、事業のスピードがあまり出なかったことです。理由はいろいろとありますが、「これは明日やろう...」の小さな積み重ねが大きなスピードの差につながってしまった側面があります。反省しきりです。

 

自分が得意で長く続けられることは

さて、最後に将来の生き方やキャリアについて考えている方にメッセージです。

 

まず、何かを深く追うには時間がかかるということをお伝えしたいです。最近は、とにかく新しいものを経験してみよう、これまでの経験を捨て去ろう、というコメントが多く見られます。しかし、ホームベースなく外に出ていったら、想像力が高まるよりも根無し草になる危険の方が高いです。

 

先日、海外M&Aをテーマにした日本電産の永守会長兼社長の講演を拝聴する機会がありました。講演は大変素晴らしい内容でしたが、今回のテーマとの関連では、冒頭のコメントが大変印象に残っています。

 

「私は1973年に京都の自宅で日本電産を従業員3人で創業してちょうど45年になります」

 

この時、ああ、永守さんは今の日本電産を育てるのに45年かかったんだな、自分は現在やっていることを何年できるかな、と思いました。60代半ばまでならあと30年はできる。35年はできるだろう。しかし45年はどうだろうか。そのように思いました。

  

 

さすがに30年40年の時間軸で考えるのは一般には長すぎるでしょうが、申し上げたいのは、考える力にせよ、想像力にせよ、そこには考え抜きやり抜いた経験の蓄積が必要であり、それは一朝一夕には身につかないということです。何の高みを目指すかは自分で選ぶしかありませんが、人生のどこかで何を目指すか決めて時間をかけていただきたい。特に、いろいろなことに目移りしがちな若い方にはこの点を強く申し上げたいと思います。ただし、大企業で内向きの仕事を長年続けても世の中に役立つ軸を育てることはできません。自分はいったい何の山を登っているのか意識することは非常に重要です。

 

もうひとつは、人間には結局のところ向き不向きや好き嫌いがあるということです。私は、人間の能力や成長というテーマに深い関心があります。そのため、教える仕事に取り組んでいて飽きることがなく、飽きないから続けることができます。また、自分は何より得意なことは深く考えわかりやすく伝えることで(ビジネスの池上彰を目指せと言われることもあります笑)、大量の情報を早く処理するのは得意ではありません。投資銀行の現場で私は一線で働いてきましたが、コンサルティングや投資銀行のような世界ではどうしても大量の情報を早く処理することが求められます。やってできないことはないのですが、疲れますし、その点においては業界に秀でている人が多くいます。ですが、彼ら彼女らは深くわかりやすいかと言えばその点は私に強みがあります。だから、私は世の中の事象から一歩引いて考え教える仕事を始めました。

 

若い間は、自分の可能性を拡げるハードワークに時間を使うこともよいでしょう。しかし、中堅を過ぎたら、自分が得意で長く続けられることに時間を使うのが長い目で見た時に活躍と幸せにつながると思います。それは、大企業やスタートアップといった軸ではなく、仕事の内容と生き方の話です。私の友人知人でも、2017年は新たな仕事を始めた方が多くいました。30代半ばというタイミングがひとつの理由かもしれません。

 

何の山を登るか、何であれば自分は得意で長く続けられるか。それに向き合うことこそが、人生において仕事に向き合うことかなと思います。それから、考えすぎるのも考えもので、本当にモヤモヤするなら実行に移してみることをお勧めします。

 

本年も大変お世話になりました。皆さま良いお歳をお迎えください。

 

藤波由剛

 

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働き方改革は生産性競争の号砲(2)~事業の全体観の理解とハードスキル

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年08月07日(月)

 

以前、働き方改革がどのように企業の人材育成に影響を与えるかについて書きました。この投稿は多くの方より反響をいただきました。今回は同じく働き方改革に関連して、事業の全体観の理解とハードスキルの重要性について書いてみたいと思います。

 

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仕事への取り組み方に、自信がありますか?

 

事業の全体観を持って判断することの重要性

日本交通の川鍋会長が、「重要なことよりも、結果が出ることをやれ」 日本交通・三代目社長が、1900億円返済の過程で得た経営哲学とは?という記事の中段で、大口の赤字顧客に値上げをお願いしたエピソードをお話されています。以前、このお話を講演で伺ったことがあるので、おそらく川鍋会長にとってこの時期の定番の講演ネタだったのだと推測しますが、非常に面白い事例だなと思います。

 

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出所:上記ログミーの記事(http://logmi.jp/23351)

 

多数の大口顧客と赤字取引をしていれば、会社が赤字になるのはある意味当然でしょう。しかし、この顧客の値上げはできないという思い込みか、売上さえ立てば利益は社員に関係がなかったのか、理由はわかりませんが、会社の存続が危うくなってもそれまでこの取引は続けられていたわけです。現場でどれだけ社員が一生懸命働いても、やっている仕事が赤字であれば会社は傾くばかりです。これは、事業の全体観を把握することが重要である、興味深い例のひとつだと思います。

 

事業の全体観を理解するためには、ハードスキルが必要

さて、上記の例は結論だけ見れば当たり前に見えますが、顧客ごとの売上と利益(率)がなければわかりません。顧客ごとの売上高を把握していない会社はあまりないと思いますが、顧客ごとの利益(率)を把握できない会社はそれなりにあると推察します。この数字を出すためには、管理会計への会社としての取り組みが必要になります。また、この数字を読み取るためには、会計の基本的な知識(というほどのものでは今回はありませんが…)と数字から意味を読み取る基本的な素養が必要です。

 

管理会計の細かなやり方は、経理部門で把握をしていれば十分と思います。しかし、「どのような数字を見れば顧客ごとの儲けの状況がわかるか」「その数字がどのような意味を持つか」は、経営や事業に携わる人が理解をしていなければなりません。そうしなければ、打つべき施策を考えることができません。

 

このように、会計は事業の状況を数字で表す言語であり、ビジネスをリードする人であれば立場によらず基本を必ず理解している必要があります。ところが、日本企業の現場では、必ずしもこの基本が理解されていません。私が聞いたところによれば、ある大手メーカーの開発の現場では、新しい開発の方向性や投資判断にあたり、会計やファイナンスの基本的な知識がまったくないメンバーで意思決定が行われ、何を以って決めたのかよくわからないという状況がしばしば見られるそうです。何とも恐ろしい話です。

 

ハードスキルを「聞いたことがある」のと「使える」のは全く異なる

私は、会社のマネージャー層以上であれば、(1)会計、(2)戦略とマーケティング、(3)セールスとコミュニケーション、の基本は、最低限学んでいる必要があると考えています。これらは「MBA的」なハードスキルと言えるでしょう。雑誌業界の方によると、MBAは雑誌のテーマとしては既に時代遅れだそうです。これらをテーマにした本はあふれており、商業的には確かに時代遅れでしょう。しかし、情報が氾濫していて聞いたことがあるということと、実際に自分で使いこなせることは全く違います

 

やっとタイトルの生産性競争の話にたどり着きますが、生産性を上げるためには、まず何よりも儲かる事業をやらなければなりません。そして、事業で儲けるには、自分が取り組んでいる事業にはどのような価値があって、どのように儲けているのかを理解するすることが必要です。全体観への理解がなければ、自分の努力は赤字の顧客に対して安値で一生懸命サービスを提供しているだけかもしれないのです。

 

私はBtoBの経験が長く、経営や購買の現場で多くの企業や個人を見てきましたが、「自分がやっている事業の価値は何なのか」「自分のやっている事業の儲けの仕組みは何なのか」について、理解が十分でない方は驚くほどに多いです。特に大企業の方は、これらをしっかりと理解しなくても強固な仕組みで仕事がまわるからこそ、却って考えていない、考えられないケースが少なくありません。もちろんこれらは案外難しいテーマで私も自分で事業を起ち上げながら日々自問していますが、これらのテーマを考え抜くにはMBA的なハードスキルが必要で、その理解が不十分で考える土台ができていない方も少なくないと強く感じています。

 

日本企業が抱える大きな問題のひとつは、この基本的な事業を見る際のハードスキルが、本来は獲得されているべき社員に十分に学ばれていないことです。ただ一方で、だからこそ日本の会社の経営にはまだまだ伸びしろがあると私は捉えています。これらの内容を本当に身につくプログラムを提供することが、当社の使命だと考えています。だって皆さん、無駄なことはやりたくないじゃないですか。どうせ働くなら、ちゃんと儲けて、余裕を持って生きたいですよね。

 

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なぜマネージャーには抽象的な思考力が求められるか

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年08月03日(木)

 

前回は、「考え方」を学ぶこと、「考え方」を指導することの重要性について触れました。今回は、このテーマに関連し、なぜマネージャーには抽象的な思考力が求められるかを説明します。

 

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「あ、そうか!」とひらめく瞬間、ありますか?

 

抽象的に考えられなければ指導ができない

ある営業部長の方から聞いた話をご紹介します。その方には、営業として優秀な部下がいました。しかし、その部下をマネージャーに昇格させることは難しく、営業部長は悩んでいらっしゃいました。なぜなら、その優秀な営業担当者は、論理的に考えることができなかったからです。

 

彼は営業としては優秀で顧客にかわいがられる「才能」を持っていました。ですので、営業成績は良かったそうです。しかし、上司への報告はいまいち不明瞭で何が起きているのか聞いてもよくわからないことがあり、教育との関係では後輩の指導がうまくできないということでした。なぜなら、自分がやっていることや考えを、論理的に後輩に伝えることができないからです。

 

ここで、「論理的に考えて伝えることができない」という課題には、ふたつの要素が含まれています。ひとつは、結論と理由をセットで適切に論証をすることができないという「論理力」の問題。もうひとつは、自分が実際にやっていることを一段高い視点からまとめること、考え直すことができない「抽象的思考力」の問題です。ここでは、後者をもう少し見てみましょう。

 

抽象と具体の思考のレベル

「抽象的に思考する」という表現は、抽象的でわかりにくいですので、具体例をあげます。例えば、Excelに数字を打ち込む際は右揃えでの表示が基本です。右揃えでなければパッと見た時に桁数をつかみにくいからです。Excelを普段使わない方でも、銀行通帳の記帳やインターネット・バンキングの画面などをイメージすればすぐにご理解いただけると思います。

 

では、後輩がExcelで数字を「中央揃え」で縦に順番に入力していた場合、どのような指導が考えられるでしょうか。

 

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違いは一目瞭然です

 

最も具体的な指導は「数字は右揃えで入力するように」です。これは、作業レベルの指示です。これに「なぜか」と理由を付け加えるわけですが、以下のレベルが考えられます。

 

1)右揃えにしなければ、桁がわかりにくいから

2)上記に加えて、人間はそろっている情報を無意識にひとかたまりの情報と捉えるので、相手に伝わりやすいから

3)上記に加えて、人間はわかりやすい情報に無意識にポジティブな感覚を持つので、数字で主張したいことが相手に承認されやすいから

 

上記の説明はいずれも本当ですので、いずれの説明をすることもできます。そして、読んでいただくと、1)から3)にかけて説明が抽象的になっていることがわかります。1)は非常にわかりやすいですが、2)はデザインの考え方で、3)は心理学の考え方です(もう一歩踏み込むと脳科学の領域ですが、そこまでは触れません)。これらはいずれも、「なぜ」という考え方を説明しています。

 

ここで理解いただきたい点は、どの考え方のレベルまで理解するかによって、応用の範囲が異なることです。1)は数字を資料にまとめる時にしか使えない考え方ですが、2)は資料作成一般に応用できますし、3)はさらに広くプレゼンテーションや日々のコミュニケーションの取り方、さらには服装のコーディネートにまで応用できる幅広い概念です。

 

優れたマネジメントになるためには抽象と具体の往復が求められる

教えるにせよ、自分の仕事に活かすにせよ、まずはこのような抽象的な考え方をできなければ、優れたマネージャーになることはできません。それは、ある時は自分の経験から考え抜くことです。例えば、異なる経験から共通して得られる教訓や、似ているけれども異なる結果を生んだ経験から何が差だったかを考えることは、自分の経験から一歩抽象的な考え方を引き出すことに他なりません。また、本や教育から学ぶこともできれば、友人との会話から考え方のインスピレーションを得ることもできます

 

ただし、本や教育などで学んだ考え方を実務で使う場合には、抽象的な考え方だけではだめで、それが具体的にどのように仕事あるいは作業に落とせるのか、具体的にイメージできなければなりません。具体化に自ら試行錯誤することで、本や教育から「借りてきた」考え方を自らのものとすることができます。そして、自らの具体的な経験と抽象的な考え方を往復することで、自分なりの「考え方」が出来上がっていきます。

 

指導という観点では、自分が考え方を理解した上で、相手に伝わるレベルで考え方を伝えることが重要です。新卒社員には「数字は桁が揃っていないとわかりにくいから右揃えにするのだよ」という指導で十分ですし、それ以上を伝えてもピンと来ないかもしれませんが、資料作成をバリバリこなす社員であればデザインの考え方まで知っておいてもらいたいところです。

 

また、ビジネスをリードするという意味では、日々の仕事をこなすフィールドから、自ら仕事を作り出したり仕組みを考えたりするフィールドに移るには、このような抽象的な思考が求められます。そして、優れたビジネスパーソンは、抽象的に本質を突くことが得意で、社会・経済の動きや異業種の動きから将来を予測し、自社のビジネスにヒントを得ることができます。

 

抽象と具体の往復は筋トレのようなもの

自分の場合、若い頃はどちらかと言えば抽象的な思考に考え方が偏っていました。それは大学で政治という「大きな」テーマばかり追いかけていたからかもしれません。逆に、新卒での法人営業は現場がすべての仕事でした。その後、投資銀行で企業分析や交渉を、現在は自社の経営を経験し、これらすべてのおかげで、今では抽象から現場まで一貫してイメージする力がかなりついたと思います(営業の現場経験も現在の自分に至る道のりで非常に重要であったことをここで強調したいと思います)。抽象と具体の往復は筋トレのようなもので、キャリアのマラソンを通じてずっと高めていかなければならないものなのでしょう。

 

最後に、今回のテーマと教育・研修の関係に触れます。「どのレベルの考え方で相手とコミュニケーションをとるべきか」は、相手の思考レベルによるため、本来は相手によって指導の仕方を変えることが望ましいです。優れたオン・ザ・ジョブ・トレーニングはそのような師弟関係です。しかし、多数の受講生がいる教育・研修では、さすがにテーラーメードのコミュニケーションをとることはできません。したがってポイントは、いかに受講生のレベルを合わせて最大公約数をとりやすくするか、いかに受講生にとって「ちょうど良い」思考のレベルで考え方を伝えるか、です。作業レベルの教育は広がりに欠け、脳科学の話は実務から遠すぎます。ここでどのようなレベル選択するかは、教育を設計する側の対象への理解度とアートなセンスが問われる部分です。ですので、同じテーマで教育・研修が企画されても、内容が同じということはあり得ません。設計者により、内容は間違いなく大きく異なります。

 

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学びと指導において重要なことは何か

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年08月01日(火)

 

前回は、学びにおけるタイミングの重要性を強調しました。それでは、正しいタイミングに何か必要なことを学ぶ機会があったとして、どのように学ぶのが効果的、指導する側からするとどのように指導するのが効果的なのでしょうか。学びと指導はコインの表裏ですので、ここでは指導の視点で見ていきます。

 

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指導の仕方はふたつ

前回と同様に就職活動を例に出して、学生から志望動機を見て欲しいと言われたとしましょう。その際に、指導の仕方はふたつあります。ひとつは、テニヲハを含めて直接書き換えてしまう方法。もうひとつは、読み手の立場から何に気を付けるべきか考え方を伝えて、問題点は指摘するものの、どうしたらいいかは示さないやり方です。

 

アウトプットに手を入れてしまうと

前者の利点は、時間がかからない、良いものがすぐできる、ということです。なぜなら、社会人経験豊かなあなたが書き換えてしまうわけですから、あっという間にできあがるはずです。職場での先輩と後輩を思い浮かべていただけば、ここでもふたつの対応がありうることがわかるでしょう。「書き換えたよ」と返して終わりのパターンと、「ここをこう書き換えたよ、なぜなら」と説明を加えてあげるパターンです。一般的に、後者の方が親切な先輩だと見なされます(笑)。

 

もちろん、説明をしないよりはした方がよいですが、説明をした場合でもあなたが直接なおしてしまった場合、相手の「なぜ修正されたのか?」「次は自分はどうしたら良いか?」への理解度は十分に高まらないことが多いです。なぜなら、人間というのは不思議なもので、説明を聞いただけではできるようにならない生き物だからです。これは私が授業をしていても強く感じるのですが、ビデオでひととおりの説明をしていても、授業での質問に答えらえる人は少ないです。スキルや考え方は自分で考えてアウトプットをしなければ、身につかないのです。

 

答えを教えないで根気よく指導すると

さて、もうひとつの答えを示さずに考え方だけを示して、自分で試行錯誤してもらう指導法。これは、非常に時間がかかります。かつ、相手がなおした内容がまたあなたの眼鏡にかなわないかもしれません。また、指導の仕方も非常に難しいです。答えは教えず、しかし、相手が考えられるぐらいにガイドラインを示す、というのは、なかなか難易度が高いです。

 

しかし、このやり方をとれば、相手はなぜ自分の書いた志望理由への評価が低かったかを考え、理由を理解した上で修正することができます。最大の利点は、志望理由の書き方のポイントや、読み手の気持ちを理解できるので、次に志望理由を書くときに同じ間違いを犯さないということです。

 

「考え方」を理解しており自走できるかが「頼りになるか」の大きなポイント

これは非常に重要なポイントですが、仕事においては「考え方」を理解しているかどうかで、その人が頼りになるかどうかに決定的に差がでます。1から10まで指示しないといけない人には、だんだんと何かを頼むがの億劫になってきます。頼むのも時間をとられるし、頼むことを考えるという作業はあなたの思考エネルギーを奪うからです。頼りになるのは、自分で考えて自走できる人です。多少わからないところがあっても、「ここまではこう考えたが、ここがわからないので教えて欲しい」と言ってもらえれば、1から10まで指示をしなければならない人に比べると圧倒的に安心感を持って「一緒に」仕事をすることができます。

 

ただ、考え方を教えるのは時間がかかって大変です。ですので、どうにも明日の朝までに片づけなければいけない仕事がある、という状況では、そこまで手がまわらなくても仕方がありません。しかし、長い目で見れば、考え方を教えて人を育てることができるかどうかで、職場の戦力が充実するかは決まります。

 

「考え方」を、学ぶ、伝える

人材育成をしない職場に明日はなく、それは「考え方」をどれだけ伝えることができ、人を育てられるかにかかっています。というわけで、今回の結論は、教える際には「結論」や「作業の仕方」だけを伝えるか、「考え方」を教えるか、があり、後者の方が時間もかかるし大変だが、長い目で見ると人材育成には避けて通れない道、となります。

 

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学びにおけるタイミングの重要性

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年07月31日(月)

 

プリンシプルズ代表の藤波です。私は投資銀行でM&Aの第一線で働いていましたが、約1年前にMBAレベルの実践的なビジネス教育の会社を起業しました。「教える仕事」ははじめてでしたが、教えること、学ぶことについて、未経験だからこそ試行錯誤をして多くのことを学ぶことができました。実践を通じて考えたことについて、いくつかご紹介をしていきたいと思います。

 

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今回のテーマは、「タイミング」です。研修の内容が社員に届かない、授業を学生が熱心に聞かない、ときにはあなたのアドバイスが部下に響かない、これらには多くの場合において共通するいくつかの理由があります。その中で最も重要なことは、相手が内容を受け入れる準備ができているか、正しいタイミングか、ということです。

 

キャリアについての優れた考え方は多くの書籍にまとめられている

わかりやすい事例として、キャリアや就職活動のお話をしたいと思います。私は一時期、キャリアの考え方について文献を集中的に読みました。世の中に、優れたキャリア・アドバイザーが少ないような気がしたので、そもそもの考え方をしっかりと学んでみようと思ったのです。

 

その結果、キャリアについての優れた考え方は、だいたいのところ確立されていると私は結論づけました。この不確実な時代に「え!」と思われる方もいるかもしれませんが、世の中には、研究者にも実務家にも「良いキャリアを歩むためにどうしたら良いか」「仕事を通じて幸せになるには」というテーマについて人生をかけて取り組んでいる人が山ほどいるのです。

 

例えば、リクルートワークス研究所の大久保幸夫氏の『キャリアデザイン入門[I]基礎力編』は非常に優れていると思います(最近、第2版が出たようです)。キャリアを探索する筏(いかだ)下りと、ある程度の専門を決めて登る「山登り」の例えなどは、非常に明確かつ有用です。

 

もっとカジュアルな本では、例えば同じくリクルートでエグゼクティブ・サーチのお仕事をされている森本千賀子氏の『HONKI SWITCH ON 本気になれば人生が変わる!』も良い本です。自分が熱意を燃やせる仕事に就くことで変わる人と会社の事例が豊富に取り上げられています。

 

米国で著名なキャリアの本はリチャード・ボウルズ氏の 『適職」と出会うための最強実践ガイド』です。自分に合った仕事に出会うためには、というアプローチでパラシュートに色分けしたりするのですが、内容の本質はご紹介した二冊と同じです。

 

その他に、多くの本や記事で紹介される「一定水準を超えると年収よりもやりがいが幸せを感じるには大事」という説も、社会心理学では定説とされている他、私の周りの人たちを見ても違和感がなく、まあそうなんだろうなあ、と思います。キャリアの本は流行り廃り含めて多くありますが、このような「幹」の理論でお目にかからない新しい主張がなされることは極めて稀です。

 

以上で申し上げたいことは、キャリアで幸せになりたいのであれば、知っているべき考え方は本にだいたい書いてあり、特に奇をてらったことは何もないということです。これは、キャリアと人生は人それぞれであるものの、人と仕事の関係はわりとシンプルということに起因するのかもしれません。

 

なぜ、就職活動中の学生へのアドバイスは徒労に終わることが多いのか

さて、ここで就職活動中の学生を例にしましょう。これまた一時期、私は就活中の学生さんに積極的に会って、人生相談に乗ったり、キャリアのアドバイスをしたりしていました。その時に、キャリアについての大事な考え方を、学生さんにもわかるような言葉で、できる限り体系的にお話するように心がけました。学生さんに「これらの本を読んだらいいよ」と伝えるのはあまりに不親切かつ学生さんも忙しいだろうから、せめてかみ砕いて説明しようと思ったわけです。

 

しかし、その時にお話しした内容の99%は、学生さんに伝わっていなかったと思います。伝わったか伝わらなかったかは、相手の表情や受け答え、そしてその後の行動を見ていればわかります。なぜ伝わらないか?というと、理由のひとつは、アドバイスをしたタイミングが相手にとって正しいタイミングではないからです。

 

例えば、「自分の性格は簡単には変えられないので、性格に合った仕事をした方が幸せになれる」というアドバイスをしても、「性格に合っていない仕事をした経験」がないと、なかなか伝わりません。そこで、授業や部活など、相手にひきつけた例えで話をするわけですが、最後は「そもそも社会人として働いたことがないので仕事で求められることがわからない」というモヤモヤがあるので、やはり伝えるのは至難の業です。

 

自分でやってみて失敗した後が一番アドバイスの効果がある

では、いつがアドバイスをする効果的なタイミングかと言えば、それは相手が失敗した時です。例えば、面接指導で最も効果があるのは、「いけると思った面接がダメだった後」です。その瞬間は、「なぜ駄目だったのだろう」「次は失敗できない」という思いが強いので、学生さんはアドバイスを真剣に聞きますし、行動も変わります。

 

これは、仕事でも同じです。新入社員の指導で効果が最もあるのは、「あらかじめ指導したことを、新入社員が守らず失敗して、もう一度指導したとき」です(笑)。やんちゃな新入社員も、この時ばかりは「言われたことを忘れていて失敗した」という負い目と、「確かにアドバイスどおりにした方がいい」という思いがあるので、行動を変えます。

 

なお、先ほどのキャリアの場合は、「このキャリアは自分に合ってなかったかも…」と実感できるのは働き始めてしばらく経ってからなので、気づいたら時すでに遅しとなりやすいです。学生さんが相手のキャリア・アドバイスの最大のハードルは、そもそも学生さんは社会を知らないことであり、これは「学生さん」である限り、覆せないと思います。したがって、第二新卒で仕事を変えることを前提に、会社も学生も就職活動・採用に取り組むのが、社会として雇用のミス・マッチを防ぐという意味では最も合理的というのが私の考えです(なお、長期インターンをすればミス・マッチが減るという考えがありますが、米国の学部生を見ていると、効果がすごく期待できるとは私は思いません)。

 

研修も正しいタイミングで行うことが大事

私が事業とする企業研修においても、この「正しいタイミング」で行うことは、研修の効果を最大化する上で非常に重要だと思います。例えば、新入社員研修を入社直後に数か月単位で行う企業がありますが、そのやり方が最適かは検証が必要です。仕事をする上で最低限の内容は多少効率が悪くても事前に研修が必要でしょうが、それ以上の研修は、現場を経験して、「自分がいかにできないか」を知り、「実際にどんなことが仕事で行われているか」 を少しでも見てからの方が、圧倒的に効果が出ると思います。ただし、「最低限の内容」には、仕事によって差があるでしょう。営業であれば、ビジネス・マナーとパソコン・スキルで十分でしょうが、エンジニアの場合は基本的なプログラミングはできないとさすがに現場に入ることすらできないでしょうから。

 

より難しいのは、年次や役職に基づく研修です。特に年次は、人によって、仕事内容も成長スピードも異なるので、ただ集めて研修をすると「同窓会」で終わってしまう可能性があります。それぞれの人が自らの課題意識に基づいて研修を「選択」する手あげ式の方が、本当に参加者に役立つ研修という意味では望ましいでしょう。

 

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働き方改革は生産性競争の号砲(1)~人材育成への影響

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年07月12日(水)

 

先日、ある会社の若手社員の方を対象にビジネス・スクールのことやキャリアのことをお話しをする機会があり、その中で働き方改革は生産性競争の号砲というお話をしました。

 

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人にとっても会社にとっても最も希少な資源は時間

 

成長には仕事の質と量が必要

自分のことを振り返ってみると、これまでよく働いてきました。最初の会社でも遅くまで働いていましたし、投資銀行でも遅くまで働いていました(現在も、世間一般よりは長く働いていますが、若いときほどの労働時間ではありません)。一方で、自分が何かのスキルを身につけたり、思考が大きく成長したタイミングは、そのようによく働いた時だったと思います。結局のところ、成長には質と量の経験が必要で、それなりの量の良い仕事に、良い上司や同僚とともに取り組み、自分に負荷をかける期間が、成長のためには必要ということです。

 

ただ、同じ経験を若い人にお勧めはまったくしません。ずいぶんと昔の話ですが、平日は午前2時まで働いて休日出勤する生活を2ヶ月ぐらい続けると、だんだんと生気がなくなってきて世界がモノトーンになってきます。歩くのも面倒になってくるのでやたらとタクシーに乗りたくなったりとか(笑)。これはまったくお勧めできるものではありません。単純に不健康で寿命が縮みます。

 

インプットの仕方を変えずに働く量に制限がかかると

しかし、働き方改革により労働時間にキャップがかかると、「よくわからないから時間でカバー」ということができなくなります。加えて、そのように一時的に負荷をかけて成長するということもできないわけです。成長のために質と量が必要ということは、普遍的な真理と言えるので、すでに実力がある人は効率よく働けばハッピーでしょうが、これから力をつける人はどうしましょうという話になります。また、中堅層も時間を意識するようになるので、若手社員への指導(OJT)に割ける時間は必然的に減少するでしょう。若手社員にとっては、量だけでなく、先輩から学ぶという意味での質にもキャップがかからざるを得ないわけです。

 

それでも成長をしたいのであれば、それは業務外で自分に自分を投資するということになります。私がやっているビジネス・スクールという事業には、そのようにOJTで支えられなくなった会社内の教育ニーズを受け止めるという強い意義があると考えています。

 

働き方改革は日本企業の人材育成力を損なうリスクを内包している

よりマクロな視点で言えば、働き方改革は日本企業を弱くする危険があると思います。雇用の専門書には、成果主義の導入により個人業績が重視されるようになった結果、OJTが減少して日本企業の競争力が弱まったという記述がしばしば出てきます。働き方改革において「業績も仕事のやり方も変えずにとにかく早く帰れ」と命ずるのは無理な話ですが、仕事のやり方を変えて成果を出して早く帰るようにした場合であっても、OJTの減少による若手社員の育成スピードの低下という課題は容易には解決できないと思います。結果として、社外における教育・研修事業へのニーズは高まるはずです。

 

さらに考えを進めると、働き方改革は日本企業の採用慣習が欧米型に変化するひとつのきっかけとなる可能性があります。日本企業の新卒社員のポテンシャル採用は、これはこれで一定の合理性がありますが、社内でじっくりと育てられることが前提となったシステムです。とにかく成果を決まった時間であげられる人でなければという話になれば、採用時点で業務に関連するスキルをどれだけ身につけているかを問われる採用スタイルに徐々に日本企業が移行してもまったく不思議はありません。

 

OJTの役割の縮小は育成の外部化を招く

冒頭にご紹介した説明会では若い方へは「早く帰って毎日飲み遊んでいるだけだと10年後に苦労するぞ」というメッセージを結論としてお伝えしました。より広く社会人の皆さんへは学び続けることの大切さを、企業の経営者と人事の方には人材育成への取り組み方を抜本的に改める必要が早晩出てくることをお伝えしたいと思います。

 

つまるところ、行きつく先は企業による人材育成の外部化の進行であり、社員個人が自分の成長により責任を持たなければならない社会の到来です。当社としては、そこでしっかりと社会に貢献できるよう、本当に身につくビジネス教育を実践してまいりたいと思います。

 

※2017年8月7日に内容を一部修正しました

 

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英語の発音と脳のバイアス

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年01月23日(月)

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年始に目標としたブログ執筆ペースをまったく守れていない今日この頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。当社では、事業を手伝ってくださる方をいつでも募集しておりますので、少しでも関心のある方は是非ご連絡ください!(とりあえず、書いてみます!)

 

さて、最近の私は基本的に事業に時間を使うか家族に時間を使うかの二択で他のことはしていないのですが、ひとつだけ自己研鑽的な位置づけでやっていることが、英語の発音をトレーニングするクラスの受講です。おそらく、これが私が英語の勉強を「フォーマル」な形でする最後の機会だと思われる…のですが、シカゴ在住の先生(非常に良い先生です!)と生徒4人をオンラインでつないで、毎週レッスンを受けています。英語は綴りと発音が規則的にリンクしていないため、レッスンではIPA(International Phonetic Alphabet)という発音記号を利用しながら、アメリカ英語の発音を丁寧に学んでいます。

 

そこで、先日大変面白い発見がありました。/a/という発音を確認している時だったのですが、先生より、/a/と発音する母音の例として、”hot”の"o"と"product"の"o"が紹介されました。自分は、"hot"の"o"は/a/と発音し、"product"の"o"は/o/に近い発音をしていたので、まずこれは勉強になりました。しかし、問題はここからで、模範の教材CDを何回聞いても、私には"hot"の"o"は/a/に、"product"の"o"は/o/に近い音に聞こえてしまうのです!そこで、私は質問しました。「先生、"hot"の"o"も"product"の"o"も同じ/a/と説明をされましたが、私には違って聞こえます。本当に、これらはまったく同じ/a/なのですか?」先生の答えは、「YES!まったく同じ/a/です!」。ところが、その後の先生の発音でも、私には違う音に聞こえてしまいます。そこでもう一度質問したところ、先生の答えは以下の通りでした。

 

「英語を学ぶ外国人であなたのように感じる人は少なくありません。なぜなら、人は母国語の発音にひきずられて音を認識するので、"o"という文字を/o/と母国語で認識しているとそのように聞こえてしまうのです。しかし、繰り返しますが、英語はスペリングと発音が一致しておらず、"product"の"o"をアメリカ人は/a/と発音します。"hot"の"o"とまったく同じ/a/です」

 

これはなかなか衝撃的でした。そうか、自分は"product"の"o"は/o/に近いと、日本語のカタカナや、中学以来の英語の勉強で刷り込まれているから、アメリカ人が/a/と言っていても/o/に近く聞こえてしまうぐらい、脳内で音を実際とは違う認識をしているのか…。人は見たいものしか見ない、とよく言いますが、音の認識にもそのような脳のバイアスがかかる余地がある、という面白いお話しでした。コントロールできない(しにくい)から認知バイアスと呼ばれるわけですが、そのようなことがあると知っているだけでもバイアスに捕まらずに済むかもしれません。おかげさまで、私も自信を持って"product”の"o"を/a/と発音できるようになりました(笑)。

 

もうひとつ最近聞いた話で面白いと思ったのは、アメリカ人にはインド人の英語はわりと聞きやすいらしいです。日本人の私からするとインド人の英語はアメリカ人の英語とだいぶ違うのですが。上記のレッスンの話と合わせて考えてみると、同じ英語を聞いていても、アメリカ英語を母語にするアメリカ人に「聞こえている」英語と、日本語を母語とする日本人に「聞こえている」英語は、おそらく違うのでしょう。そうすると、日本人には「日本語っぽいなあ」と感じられても、アメリカ人にはそれほど違和感なく聞こえる英語というものも、存在するのではないでしょうか。

 

最後に小話ですが、私は/a/の発音が「シカゴなまりだ!」と先生になおされました(先生もシカゴの人ですが)。え、シカゴ訛りなんてあるの!!とこれまた衝撃だったのですが、シカゴ訛りでは/a/の発音時に少し鼻に音がかかるのだそうです。確かに、言われてみれば私はたまにそうしていました(シカゴにいたからでしょう)。標準的な米語では鼻に音はかけないということで、これは、基本をわかった上でシカゴ訛りでもいいかなと思っています(笑)。

  

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Gの入口としてのMBA

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2016年11月14日(月)

トランプ当選の背景分析、以下の冨山さんの分析は非常に明瞭でした。冨山さんの「G型大学とL型大学」という従前からの主張と、同じ考えに基づくものと理解しています。

 

【冨山和彦】「Gの時代」が終わり、「Lの時代」がやってきた

 

Gの世界がこれまでの社会をリードしてきた―という感覚には、とても同意できるところがあります。なぜなら、MBA留学時に、MBAトップ校はGの世界の「入口」という感覚を持ち、そのような世界を垣間見ているからです。

 

現在の私は、東京は昔ながらの半蔵門界隈で、自営業(!?)として自由気ままに(!?)働いていますが、シカゴ大学MBAの同級生や日本人の留学同期の中には、卒業後に文字通り「世界を飛び回っている」人がいます。その代表的な職業は、コンサルタント、投資銀行、VCなどの投資家、そしてシリコンバレーのテクノロジー企業に勤める人たちです。テクノロジー企業は少し特殊ですが、その他の「伝統的な」エリートの世界に入るために、MBAトップ校はエントリーチケットを提供してくれます。私は、教育システムの在り方を自分なりに考える中で、現在の「MBA」という学位の価値の半分は、このようなGの世界へ入るためのブランドとネットワークであると整理しています。

 

留学は本当に楽しかったですし、貴重な代えがたい経験でした。また、特に海外経験のない日本人がさまざまな人に揉まれて成長する場として、留学に高い価値があることは間違いありません。しかし、よりグローバルな視点で見たときに、このようなGの世界へのエントリーチケットとしての現在のMBAの在り方と、参加に必要な高額な授業料には、強い疑問を持っています。ビジネス教育はより幅広い人々から求められており、もっとアクセスのしやすいビジネス教育が必要なのではないだろうか―。

 

そのような想いがプリンシプルズの創業のひとつの経緯になっているわけですが、冨山さんの解説を読みながら、自分はGとLの世界の狭間にいる人間なのかもしれないなと思いました。誤解のないように補足しますと、Gの世界にも、Lの世界にも、人間的に優れた方、志を持った方、優秀な方が多くいらっしゃいます。自分が、これらの世界の架け橋のような存在になれれば、とても嬉しいですね。

 

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尖った人を活かす

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2016年11月06日(日)

友人と、「ある不自由が障害とされるか否かの境は曖昧なのではないか」という会話が先日ありました。例えば、私は目が悪いので、眼鏡がなかったならば、動体視力が大事だった時代には「障害者」という位置づけになっていたかもしれません。しかし、眼鏡があるので、何の不自由なく生活し、時に旅先で遠くの絶景を楽しむこともできます。技術が変われば、あるいは社会の豊かさが変われば、ある不自由は障害ではなくなり、あるいは一般に不自由とみなされていたことは個性として強みにすらなりえます。

 

この話に関連して、「個性が強い人は変な人が多い」ということを思い出しました。実例を公の場でお話しするのはやや差し障りがありますので(笑)、たまたま今ハリーポッターの音楽が流れているのでこれを例にすると、ハリーは結構しょうもない少年だと私は思います。だいたい、大人のアドバイスに従わないで酷い目にあったり、それだけならまだしも、無鉄砲な行動で仲間を危機に陥れたり。物語だから(!?)結果オーライなので問題ないわけですが、その行動だけを見たらなかなかの問題児です。しかし、彼はヒーローだから、その彼の無謀さすらも「ハリーは勇気がある」「他の人にはできないことを成し遂げる何かがある」と評価されるわけです。彼が主役のヒーロー以外だったら、評価されないこと請け合いです(余談ですが、成功する起業家というのは、ハリーのように無謀で周囲に迷惑をかける人の方が多いように思います)。

 

現実に、「この方は、おそらく他のことをやったらまったくダメだろうけれども…この分野については本当に凄い」という方を、私は何人か知っています。それは、難しいことではなく、例えば私の会社であれば…と、本人に直接話している内容ではありますが、やはりここで実例をあげるのはやめておきます(笑)。言えることは、個性を活かすとはそんなに難しいことではなく、身近にあればとても自然だということ。そして、個性を活かすためには、寛容さが必要だということです。個性のある人は偏っていることが多いので、「それもいいんじゃない」と大らかな気持ちを持っていないと周囲がストレスを感じることになります。

 

「尖った人を活かす」とは、古くて新しいテーマです。尖った人を活かすことは、本人のためにも、周囲のためにも、社会のためにもなります。政治や経営の立場からも、是非この問題を考えていただきたいと思います。

 

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大人も勉強が必要

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2016年11月03日(木)

先日、ライフネット生命の出口会長の講演を伺う機会がありました。著書を拝見したことはありましたが、お話しを聞かせていただくのは初めてで、その博識ぶりと一貫した哲学に圧倒されました。

 

出口さんの哲学のひとつは、「人間は昔からそんなに変わっていないので、数字ファクトロジックでタテヨコを見てみれば(歴史と現在の比較、他者と自らの比較をすれば)だいたいのことはわかる」とお見受けしました。生命保険についてだけでなく、日本が抱える課題についてもお話しされていましたが、いずれも非常に論旨明快で強くうなずく内容ばかりでした。

 

もうひとつ、大変印象に残ったのは、「日本のおじさんは勉強しない」「工場モデルの『メシ、風呂、寝る』の働き方から、サービス業モデルの『人、本、旅(出かけること)』に働き方を変えなければならない」というお話しです。多くの大人が勉強をしなくて良いのは、戦後に生まれた、メーカーを前提とした日本の長期雇用慣行に大きな原因があります。しかし、現代ではサービス業に比重が移っており、サービス業で生産性を高めるには工夫や独創性が求められるため、勉強も必要だし、さまざまな刺激を受けることが必要だ、というわけです。

 

このような考えに強く共感するからこそ、私は新しい学びの場としてビジネス・スクールを作っているわけですが(笑)、わずか50分のお話しの中で、ご自分のスタンスを論旨一貫して示され、ライフネット生命の宣伝もしっかりとされる出口さんの努力には本当に脱帽いたしました。お忙しい中、どのように最新のトピックを含めて勉強されているのでしょうか。

 

私は就職活動をした時に、「金融業界では一生勉強が必要」という話を耳にし、「一生勉強するのは嫌だなあ」と思った記憶がハッキリとあります(それが理由ではないのですが、新卒の就職活動で私は金融機関を受けていません)。そのような私が、「大人も勉強が必要だ!」と論陣を張り、自分も好き好んで勉強をするようになったのですから、人生何があるかわかりませんね。

 

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