メニュー

議決権行使助言会社とは

カテゴリ: 会計・ファイナンス 作成日:2017年06月20日(火)

 

Newspicksで議決権行使助言会社に関する記事を見かけました。

 

【深層レポート】総会屋に代わる火種。野村證券「仁義なき戦い」

https://newspicks.com/news/2311788/body/?ref=index 

 

議決権行使助言会社とは、機関投資家が投資先企業の株主総会で議案に賛否を表明するにあたり、参考としてもらうレポートを配信する会社です。ISSとグラスルイスが有名です。

 

これらの会社の顧客は、機関投資家です。特に、欧米の機関投資家は、これら議決権行使助言会社のレポートを参考にすると言われています。機関投資家は株主総会で議案に賛否を表明しなければなりませんが、投資先の企業は非常に多く、個別の議案を十分に吟味するリソースが自社にはないため、議決権行使会社のレポートを参考にします(意地悪な言い方をすれば、あまり個別議案の吟味にリソースを割くインセンティブがないので、議決権行使助言会社に判断を「丸投げ」しています)。

 

議決権行使助言会社は、助言をするだけ…とも言えますが、それなりに機関投資家に影響力があるので、個別の議案になぜ賛否を表明するのか、アカウンタビリティが機関投資家や株主総会を開催する企業から求められます。そのため、議決権行使助言会社は、どのような考え方で議案の賛否を判断するか、各社のホームページでガイドラインを公開しています。例えば、日経ビジネスの以下の記事は、直近で変わったISSとグラスルイスのガイドラインについて解説しています。

 

ISSとグラスルイスの「新助言方針」とは

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/15/275626/012000023/

 

Newspicksの記事の中で、「議決権行使助言会社は個別の議案の背景をきちんと理解しているのか」という趣旨のコメントが出てきますが、議決権行使助言というビジネスが構造的に抱える問題は、株主総会が一時期に集中する場合、十分なスタッフを手当てしにくい点です。日本企業の場合で言えば、日本企業の株主総会は6月に集中するので、日本企業を担当する議決権行使助言会社にとって5月から6月は超繁忙期です。しかし、超繁忙期に合わせてスタッフを十分に配置すれば、他の時期はやることがなく人件費がかさむことになります。

 

したがって、議決権行使助言というビジネスのキモは、いかに少人数で顧客である機関投資家からの質問に耐えうる水準の助言レポートを発信するかという点にあります。よって、議決権行使助言会社のガイドラインは、機関投資家や企業に対する説明責任を果たすと同時に、このガイドラインに沿って限られた人数である程度は機械的に判断するからある程度それは勘弁してくださいねというエクスキューズの役割も担っていることになります。また、議決権行使助言会社としては、ガイドラインに反する助言を出そうとすると、個別事情を丁寧に理解して機関投資家に説明を尽くさないとならないので(面倒ですから)、なるべくガイドラインに沿って助言を出そうという強いインセンティブが働くことでしょう。

 

このような構造を考えると、自社の意に反するガイドラインを出されてしまった時点で、議決権行使助言会社の意に反することをしようとしている会社にとっては負け戦に入っているということになります。議決権行使助言会社の行動はグローバルなコーポレート・ガバナンスのトレンドに沿っているので、そもそもコーポレート・ガバナンスのトレンドにおいて日本としての意見をはっきりと打ち出すこと、さらに日本市場向けのガイドラインの作成において日本の実情に合わない内容が入り込まないようコミュニケーションをとることが必要なのでしょう。おそらくこのようなことに取り組んでいる方も経団連や学会などにいらっしゃるのではないかと思いますが、グローバルな規範がビジネスにどのように影響を及ぼしているかという一つの例と言えるかもしれません。

 

ところで、Newspicksのタイトルでは、議決権行使助言会社が総会屋と並べられていますが、アクセスを集めるためとはいえさすがにこのタイトルはいかがなものでしょうか。議決権行使助言会社が、日本のコーポレート・ガバナンスの改善に一定の役割を果たしていることは明らかです。議決権行使助言会社との対話を通じて、日本のコーポレート・ガバナンスが健全に発展していくことを期待したいと思います。

 

ひふみ投信の誠実さと投資の大切さ

カテゴリ: 会計・ファイナンス 作成日:2017年02月17日(金)

170217

 

昨日、カンブリア宮殿でひふみ投信(会社名はレオス・キャピタルワークス)の藤野さんがご紹介されていました(こちらで1週間は見ることができるようです)。藤野さんの情報発信はチェックさせていただいており、テレビの放映でもそうでしたが、常日頃より(僭越ながら)誠実に運用の仕事に取り組まれている素晴らしい方だと思っています。

 

藤野さんが運用されているひふみ投信の基本的な投資手法は、地方のまだ知られていない成長企業を、足で情報を稼いで発掘してリターンをあげるという考え方です。教科書的に言えば、まず中小型株は大型株と比較して非効率なので知恵によりリターンを出す余地が大きく、加えて他の投資家は行っていないナマの情報と経験に基づく投資眼で景気の波ではなく自助努力で成長する会社を選び出すことで、リターンの確度を上げているということかと思います。

 

加えて、この会社は独立系であり直販投信であるという点も大きな特徴です。直販をベースに、自社の考え方を理解してくれる証券会社や銀行と販売の提携を行っていると理解しています。私は、できるのであれば、お客様に自分で直接商品を販売することが重要だと思っています。これは、私の1社目の会社での経験によるところも大きいのですが、まず、直販ですとインセンティブのねじれが生じません。製販を分離した場合、作る人と売る人の利害は往々にして不一致なので、販売をうまくコントロールできずに思ったような商品企画もできないということがまま生じます。加えて、直販ですと顧客が直接見えます。顧客と直接やりとりをすることで、顧客が何を求めているかもわかりますし、自社の商品の何が顧客に評価されているかもわかると思います。レオスは、販売会社経由での販売も多いと思いますが、投資家への説明会や懇親も多く開催されている印象があります。

 

最後に、ひふみ投信は正しく投資をしてリターンを上げることが世の中のためになるという強い信念を持っていらっしゃいます。これも、教科書的ではあるのですが、その信念をビジネスとして貫くのは容易なことではなく、素晴らしいと思います。授業でも必ずお話しするのですが、個人投資家が株式投資をするということは、経済の民主化だと、私は考えています。会社が儲ければ、それは株主の利益となり、それは結局は私たちの利益であるということです。ただし、やみくもに個人がお金を投じれば良いということではなく、きちんと良い会社を選び、また悪い会社は罰を受けるよう、規律的に投資をするプロも必要になります。この循環が太くなればなるほど、私はその国では経済の発展と国民の幸せが直結するようになると考えており、レオスはその一翼を担われていると思います。

 

偉そうに恐縮ですが、せっかくの機会でしたので、ひふみ投信と投資に対する私の基本的な考え方をご紹介させていただきました。投資は良いとき悪いときがありますので、一本調子に今後も順調とはなかなかいかないと思いますが、影ながらひふみ投信を応援させていただきたいと思っています。

 

そうだもうひとつ!番組中の「こういう会社は成長しない」というお話しで、「スリッパ履きの会社は成長しない」というコメントがありました。私、会社を作るときに、(優先順位は低いものの)土足禁止も悪くないかな~と、ちょっと思っていたのですよね。理由は、楽だからです(笑)。でも、テレビの中でのコメントでも「スリッパ履きの会社=公私混同したい会社」とお話しされていましたが、特に私の教育事業のように「お客様にオフィスに来ていただく」ビジネスでスリッパ履きは、会社に入りにくいし、プロ感にも欠けるから、やっぱり良くないだろうと思って結局やめました。スリッパとか、傘立てとか、そんなところで差が出るか?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、やはり経営者の気持ちというのは、会社の細かいところに出てくるのかなと思います。スリッパについては、技術型のスタートアップなどであれば、また受け止め方は違うとは思いますけれどもね。

 

最後に余談ですが、ここまで褒めておいてなんですが、私はひふみ投信に投資していません(汗)。なぜなら、起業中で、自分の資産をすべて現金にしているからです。しかし、年金でひふみ投信を購入しようと思っています。が!某個人型確定拠出型年金に申込をしたのですが、いつまでたっても手続きされたという連絡が来ません。某社さん、早くのお手続きを宜しくお願いいたします。

 

 

金融、特に投資という仕事の面白さ

カテゴリ: 会計・ファイナンス 作成日:2017年02月15日(水)

coins 1726618 640

 

私は、もう金融業界では働いていないわけですが、金融の議論をすることは好きですし、教えるためと自分の興味関心から金融の勉強は続けています。昨晩も、業界のシニアな方と議論の機会を頂戴し、大変に勉強をさせていただきました。顧客に価値を提供する、という意味では、金融も他の業界と同じであり、あるいはお金という色のない不思議なものを扱っているが故に、他社と差別化が難しい業界であるかもしれません。しかし、金融、特に投資という仕事には、以下の特色となる面白さがあると思います(私は、投資そのものを仕事にしたことはありませんが)。

 

まず第一に、金融は思考の射程が広いです。金利であれば信用リスク、エクイティであれば会社の価値を金融では扱いますが、これらをしっかりと議論するためには、特定の製品やサービスの概略に加えて、会社の仕組み、経済の仕組み、さらに範囲を広げればマクロ経済の動きや国際政治まで理解をする必要があります。なかなか、マクロ経済や国際政治まで直接的にカバーが求められる仕事というのは多くなく、この思考の射程の広さは、金融ならではです。就職活動の時に、「何に興味があるかわからなければ、とりあえず金融業界に入ると、世の中の仕組みがわかるようになって良い」と、誰かからか聞いた記憶があるのですが、このアドバイスは正しいと思います。

 

第二に、金融には勝ち負け、あるいは、結果が出るという特徴があります。マーケットは日々動きますので、自分が昨日考えたことが正しかったか、より中期的に見れば自分の経済に対する見立てがこの数か月、数年において正しかったか、必ず結果が出ます。特に、投資は結果=リターンが直接出る仕事であり、「競争」が好きであれば、この金融の特徴は非常にエキサイティングです。

 

そして最後に、金融は奥が深いです。 金融は、原則はシンプルかもしれませんが、突き詰めれば突き詰めるほどわからないことの多いビジネスです。例えば、「最近の金利の傾向はどうか」は、情報ベンダーを叩けば誰にでも説明できます。しかし、「金利とは何か」「なぜ今金利はこの水準なのか」「金利水準は今後どのように変化すると考えられるか」を、本当に腹落ちして自分の言葉で説明することは非常に難しいです。あるいは、貨幣とは何なのか、信用とは何なのか、国家の興亡と金融にはどのような関係があるのか。金融を突き詰めると、最後は歴史と思想に行きつきます。このようなビジネスの分野は、なかなかありません。

 

金融は、人間が作りだしたフィクションのように見えるけれども、フィクションではなく、けれどもやはりフィクションに見えるー。私は金融という概念は社会の進歩に欠かせない道具だと思いますが、誤解をされやすい(そして、不勉強な人ほど金融を無条件に批判しやすい)道具でもあります。現在は、ベーシックな内容をコースで扱っていますが、いずれは先端や歴史のコースも提供したいと考えています。

 

最後に余談ですが、新卒の時、私は金融機関を一社も受けていません。ある銀行の方とは、自分は金融に興味がないことについてケンカをしたぐらいです。そんな私が、金融の面白さを説いているのですから、人生わからないものです。もしも、この記事を学生さんが読むことがあれば、何ごとも食わず嫌いは良くないよとお伝えしたいですね。

 

もうひとつついでに余談ですが、はじめての方と名刺交換をさせていただくと、「ファンドの方ですか?」とよく聞かれます。「プリンシプルズ」という社名が、投資家っぽいのでしょうか…。金融にどっぷり戻ることはないと思いますが、金融に再び関わるのはいずれは面白いかもしれませんね(笑)。

 

「個人投資家を増やすことが大事」は本当か

カテゴリ: 会計・ファイナンス 作成日:2017年02月06日(月)

170206

 

今朝の日経新聞に面白い記事が出ていました。

 

個人投資家、振り向けばいつも逆張り (市場の力学)

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD25H4I_X20C17A1SHA000/?dg=1

 

「年間で見ても、2016年まで過去10年間のうち実に8年で、日経平均の上げ下げと個人の売り買いは逆方向だった」とありますが、そこまで見事に個人投資家が逆張りというのは知りませんでした。なぜ個人投資家は逆張りなのか?の理由として、日本の個人投資家の売買動向は見事に逆張り(株価が上がれば売り、下がれば買う)だが、それは個人投資家がファンダメンタルズを信じておらず「値ごろな価格だから買う」という感覚だからだ、と書かれています。この理由付けは、わかる部分もありますが、一方で証券会社が買ったり売ったりさせているのでは…という気もします。

 

少し話は変わりますが、このコラムに関連するテーマで、私は、「個人投資家を増やそう」という、政府、証券会社や事業会社が掲げる目標には、半分賛成で、半分反対です。

 

まず、「貯蓄から投資へ」という意味では、この目標には私は大賛成です。日本は家計の余剰資金に占める銀行預金の割合が高い国と言われますが、利息のつかない銀行にお金を積み立てることで日本の家計は損をしています。もちろん、株式投資にはリスクがありますが、「時間」を味方につけることができる個人投資家は、長い目で見れば株式投資で(少なくとも銀行預金よりははるかに)報われる可能性はかなり高く、特に税制上の優遇がある確定拠出年金(最近、多くの人が個人型確定拠出年金に加入できるようになりました)やNISA(少額投資非課税制度)を通じた投資は、余剰資金が少しでもあればなるべく早く取り組んだ方が良いと思います。

 

一方で、「個人投資家を増やそう」という目標を、「個人が個別株をどんどん買おう」という意味で使うのであれば、私はこの目標には反対です。なぜなら、個別株式を評価して買うにはそれなりに会計とファイナンスへの理解が必要であり、それを「個人投資家を増やそう」という目標で掲げられるほど、多くの人がきちんと理解するのは、相当に難しいと私は考えるためです。また、個別株式の評価にはそれなりの「情報」(公開情報を株価の分析につながるよう整理した情報)も必要ですが、これも一般に入手は容易ではありません。自分で分析することは可能ですが、結構大変です。

 

例えば、昨年、「シン・ゴジラ」と「君の名は」のヒットから、東宝の株価が大きく上昇したことがあります。

 

東宝の過去2年株価チャート

http://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/chart/?code=9602.T&ct=z&t=2y&q=l&l=off&z=m&p=m65,m130,s&a=v

 

上記のチャートで2016年9月の株価上昇が、映画のヒットに反応したものです。しかし、東宝の株価を少し分析し、私は以下のように考えています。

 

  1. 株価は企業の収益上昇を反映するものの、この2016年9月の株価上昇は、映画のヒットによる収益拡大の見込みから合理的に考えられるレベルをはるかに超えている。
  2. 2016年9月以降も株価推移は(アップ・ダウンはあれど)堅調に見えるが、実際はこの間にトランプ相場で日経平均は大きく上昇しており、実際の東宝の株価の伸びは日経平均と比べるとそれほどでもない(私が昨年末に行った分析では、むしろ日経平均の伸びに負けている)

 

特に、1.は個人投資家が値を吊り上げた結果と考えられ、この他にも、中小型株を中心に個人投資家の需給が株価を形成している銘柄ではファンダメンタルズ(株式評価の基本的な理論)から乖離した株価がついている銘柄は珍しくありません。Yahoo!ファイナンスの掲示板を見ても、株式への基本的な理解ができていない個人投資家のコメントは少なくなく、個別株式をそれなりに評価して投資をするというのは簡単ではないのです。

 

自分で評価するのが難しいのであれば、プロの機関投資家が運用するETFや投資信託を(低コストで)個人は買って運用をプロに委託し、じっくりと時間の利益を追求する方が中長期的に儲かる可能性は高いと思います。素直に考えれば、自分の資産状況に応じて、資産配分を決めてインデックス投資を行うのが、コストが低く合理的な判断です。そして、個人の資金が(インデックスだけではなくアクティブも含めた)ETFや投資信託に流れてプロが成績を競い、競争に促されてプロが投資先の会社をきちんと監視する、という形ができることが、マーケットを効率化し、すべてのステークホルダーにメリットのある姿だと私は考えます。

 

私は、個人投資家による個別株投資のすすめを推し進めると、「非合理な」投資行動をとる個人投資家が市場に占める割合が増えてしまうと考えています。非合理な投資家のマーケットへの参入は、市場に歪みを生み、これはプロの投資家に収益機会をもたらします(個人投資家がカモにされる)。カモがいた方が金融業界は儲かるでしょうが、個人による個別株投資の推奨はマーケットのあるべき姿からは外れているのではないかと思います。

 

なお、私は個人的に株式は好きですし、個人が個別株を「理解した上で積極的に」買える環境は理想だと思います。しかし、個人による個別株投資の推奨には、ファイナンス教育と金融情報の提供がインフラとして必須です。特に金融情報の提供(会社の分析や各種マーケット・データを利用しやすい形で提供すること)にはコストがかかります。これらがアクセスしやすく提供されるのであれば、私も「個人に個別株売買を推奨しよう」というスローガンにかなり共感できるのですが、コストがハードルとなり、これらのインフラが個人向けにしっかりと提供される時代が来るとは私には思われません。したがって、やはり私の結論は「個人による個別株投資は目標として不適切では」ということになり、成績を競うプロに個人がお金を預ける流れの方が、より健全だと思います(ただし、日本のプロ投資家の競争が十分か、というのは、また別の話ですが)。

 

運転資本と下請法

カテゴリ: 会計・ファイナンス 作成日:2016年11月04日(金)

Newspicksを通じてはじめて知ったのですが、下請法という、下請代金の不当な値引き要請や支払期日の延期などを防ぐための法律があるそうです。それが50年ぶりに改正および運用強化の方向で、支払手形の期間短縮や、現金払いの要請が行われるとのこと。

 

「下請法」50年ぶり見直しへ。支払手形の期間短縮、ルール厳格化

下請法の運用強化、親事業者に「現金支払い」要請

 

クラスでは、経営者としては運転資本を最小化もしくはマイナスとすることが、自社のキャッシュフローを改善させるために望ましいというお話しをします。そして、これは自社の経営を行う上では間違いなく正しいことです。おそらく、大企業の方よりも、中小企業の経営者の方の方が、資金繰りという意味でこの点にシビアな感覚をもっていらっしゃると思います。

 

しかし、考えてみれば、自社の運転資本を改善するということは、仕入先への支払いを遅らせたり、販売先からの代金受取りを早めたりすることです。したがって、相手のキャッシュポジションは必ず悪化することになります。つまり、運転資本の水準を変えるということは、ゼロサムゲームなわけです。ですので、運転資本のご説明をしながら、すべての会社が自社のために運転資本を真剣に改善しようとすると、どうも世の中がギスギスしてしまうなあと思っていたりします(笑)。

 

相手との取引において、どのような水準が支払条件の落ち着きどころなのかは、究極的には答えがありませんので、その業界の「常識」によるということになります。しかし、半年以上の掛けが当然の業界があるという話を聞くと、歴史的な経緯があるのでしょうが、なぜそこまで相手企業の与信に責任を持たなければならないのか、いささか理解に苦しみます。どのような事情があるのでしょうか。

 

記事によると、政府の方針は中小企業が大企業との取引で不利にならないようにすることに主眼があるようです。ゼロサムゲームで答えがない以上、掛けの条件は交渉ポジションで決まります。したがって、交渉力の弱い中小企業を守るためには、法律で一律に条件を定めるのが最良の手段です(もちろん、中小企業の側には、新たな販売先を開拓して既存の販売先への交渉ポジションを強めるという選択肢もありますが、現実には容易ではないでしょう)。いずれ、このような購買の交渉についてもプログラムで扱ってみたいと考えています。