メニュー

教えるということ

カテゴリ: プログラム 作成日:2018年02月04日(日)

 

今日でひとつのコースが終了しました。最近は並行していろいろなコースを並行して開講しているので一段落ということは特にないのですが、コースが終わるとそれなりに感慨深いものがあります。

 

180204

 

「コーポレート・ファイナンス」を修了した金融機関の若手社員の方より以下の感想をいただきました。

 

正直なところ、例えば証券アナリストの経済などは何の意味があるのかと疑問視していましたが、講義を通して非常に意味合いを感じることができました。また、本プログラムのおかげで様々な情報への関心、プロとしての自覚という点で非常に役立ちました

 

「全体を通して(講師の説明を)ロジカルに感じわかりやすかったです。説明が入ってきやすく良かったです」

 

よく勉強をしてくれ、教えた側としてもとても嬉しく思います。過去に、学校の授業や会社で研修を受けて、あまり意味を見いだせなかった方は多くいらっしゃると思います。私が強く申し上げたいのは、そのように感じてしまう一端には、「教え手の教え方のまずさがある」ということです。

 

同じような内容を扱っていても、教え方によって、学び手の理解の深さも仕事での役立ちもまったく変わってきます。教え方の専門性(expertise)に大きな差があることは、一般によく認識されておらず、同じような「タイトル」の講座であれば同じように受け取られがちですが、実際には大きな差があります。先日も「受けてみると凄く良さを感じるのだが、何が良いかと言われるとうまく言葉にできない」と「ビジネス定量思考」の受講生にコメントをもらいました。嬉しいコメントではあるのですが、うまく説明できないことには私も困っていて、手を変え品を変え説明をさせていただいています(苦笑)。

 

いずれにせよ、実績が最もわかりやすい証拠となりますので、一歩ずつ取り組んでいきたいと思います。その蓄積が、受講生のキャリアの充実につながり、中長期的に日本企業の強さにつながり、ひいては日本経済の成長につながるのですから(それだけではないですが)。

 

授業では毎回フィードバックをとっており、ファイルにまとめてあります。いずれ自分以外に講師をお願いするようになっても、自分で直接教える講座は持ち続けたいですね。面白いですし、教えることで得られることが多くあります。多くの方の応援に応えてまいりますので、引き続き宜しくお願い申し上げます。

 

あ、今日コースが最終回だった方には、これから確認テストを送付します。結構難しいと思うので、頑張ってください!(笑)採点と受講を通じた個人フィードバックを添えてお返しします。

 

藤波由剛

 

============

1)「企画担当・事業マネージャーのための会計ファイナンスセミナー」(無料)を好評開催中。詳しくはこちらから。

2) コースの詳細はプログラム一覧パンフレットからご確認いただけます。

3) 法人向け研修を提供中。こちらのフォームよりお問合せください

 

会計とファイナンスを学ぶとはどういうことか

カテゴリ: プログラム 作成日:2018年01月05日(金)

 

昨年末より「企画担当・事業マネージャーのための会計・ファイナンス」セミナーを開催し好評です。週刊ダイヤモンドの年末特集号にも「決算書がすらすら読める『財務三表虎の巻』」という付録がついており会計ファイナンスの勉強熱は一般に高いようです。

 

180105

 

しかし、会計ファイナンスが誰にでも必要かと言えば当然そんなはずはなく、そもそも会計ファイナンスは誰が何のために学ぶべきかはよく理解されているとは言えません。そこで、新年の目標を考えていただくヒントに、会計ファイナンスとは何で、学ぶとどんな良いことがあるかを簡単に解説したいと思います。

 

会計とは何か、誰に必要か

会計とは一言で言えば「事業を数字で可視化する事業の言語」です。以下の図をご覧ください。

 

170105 2

 

会社は事業のためにさまざまな取引をします。顧客への製品サービスの販売や取引先からの仕入はもちろん取引ですが、皆さんの会社での勤務も雇用契約に基づく会社との取引の結果です。次に以下の図を見てみましょう。

 

170105 3

 

会社の取引の裏には多くの場合においてお金の動きがあります。皆さんも給料やボーナスとして雇用契約の対価を会社から受け取っています。これらの取引と表裏をなすお金の動きを一定のルールに基づき集計することが会計処理であり、集計された結果で最も重要な書類を「財務三表」(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)と呼びます。

 

ですので、会社や事業の実態を数字で理解したいと思ったら、この会計の言葉がある程度理解できる必要があります。勉強なしに外国語が理解できないように、会計も勉強しなければ理解できません。会計の専門家を目指すのでなくても、会社や事業を数字で理解したいのであれば会計の勉強が必要です。これがよく「会計はビジネスの必修科目」などと言われる理由です。

 

どこまで会社や事業を数字で理解したいか

ここまでの書き方だと「社会人は全員が会計を勉強する必要がある」となりそうですが、そんなことはありません。誰でも会社や事業の数字に多かれ少なかれ触れることがありますが、求められる理解のレベルは役割により大きく異なります。大まかには、(1)売上やコストの数字を追う、(2)利益の数字を追う、(3)事業のお金の流れを追う、の3つのレベルが数字の理解にはあり、どこまで追いたいかで会計を学ぶ必要があるか(ないか)が決まります。

 

結論だけ申し上げれば、日本企業の現場には(1)しか求められていない人が多くおり、その場合は会計の勉強は必ずしも必要ではありません。一方で、経営者や新規事業の担当者、あるいは開発の投資担当者は(3)まで理解が必要で、会計の勉強が必要です。

 

ただし、(3)ができると会社や事業の全体像を数字で追えるようになります。ですので、本当は教養として(3)を多くの社会人が理解していると、会社や社会で「おかしな」意思決定は減るでしょう。ただ、勉強は必要な時にするのが一番良いので、教養としてすべての社会人が会計を勉強した方が良いとは私は言いません。とはいえ、全体像がわかると高い視点で仕事に取り組めるようになるので、特に現場のマネージャーの方や事業のリーダーを将来目指す方が会計を学ぶと仕事の質が高くなるでしょう。

 

ファイナンスとは何か、誰に必要か

一方でファイナンスとは何でしょうか。私は「投資のリスクリターンを定量化する手法」がファイナンスであると説明しています。したがって「投資の意思決定に関わる人」はファイナンスを必ず使いこなせなければなりません。ファイナンスを知らずに投資判断をするのはゲームのルールを知らずにカジノでお金をかけるようなものです。

 

会社の投資と言えば設備投資が一般に最もピンと来やすいでしょう。その他に開発投資や企業買収(M&A)も投資に該当します。新規事業を開始する条件や既存事業を撤退する条件をどのように定めるかも投資判断です。これらは概ね経営者や経営企画が担当するエリアですが、事業部門の中堅以上であれば判断に携わることもあるかもしれません。

 

また、会社は資金調達をします。会社の設立時に株式を発行して受ける株主からの出資と、銀行借入が典型的な資金調達です。これは会社から見れば調達ですが、お金の出し手からみると投資(融資)になります。したがって株主や銀行はお金を出すリスクリターンを検討します。一方で会社はどのような条件であれば出資や融資を受け入れて良いか検討します。このように会社の立場では資金調達の検討時にもファイナンスの考え方が必要になります。これは経営者や財務担当者が担当するエリアです。

 

以上のように、会計とファイナンスはまったく異なる内容です。そして、ファイナンスは投資や資金調達の意思決定に携わる人でなければ仕事で直接使うことは非常に少ないです。このような人は会社であれば通常はかなり限られるでしょう。

 

一方で、ファイナンスは教養としては実は非常に面白いです。なぜかというと、ファイナンスは資本主義の礎を為す理論であり、ファイナンスがわかると世の中の動きがよくわかります。世の中がよくわかるという意味では会計にも同じことが言えますが、ファイナンスは答えがなく非常に人間臭いところが面白く、ファイナンスを考えるとは究極的にはお金と企業や社会の関係を考えることでもあります。個人的には、会計の本を余暇に積極的に読もうとは思いませんが(笑)、ファイナンスの本は余暇に読むことがありますし積極的に勉強も続けています。

 

ただし、ファイナンスは会計の知識がなければ理解できません。ですので、ファイナンスを理解したければある程度は会計を学ぶ必要があります。

 

この話にもう少し興味がある方は

私が開催するセミナーに是非ご参加ください(笑)。セミナーでは具体的な事例も用いて会計とファイナンスを学ぶとわかることと学びのステップについて説明します。

 

企画担当・事業マネージャーのための会計ファイナンスセミナー

 

学びには目的が重要ですので、「自分にはどこまで必要か」「自分はどこまでなぜ学びたいか」を整理していただきたいと思っています。

 

また、今回は「会計やファイナンスは仕事でどのように役立つか」という観点で書きましたが、私が教えるコースに個人投資家の方がときおり参加されます。ファンダメンタルを見る株式投資家にとっては、会計ファイナンスが役立つ(もしくはスキルとして必須である)ことは言うまでもありません。

 

藤波由剛

 

============

1)「企画担当・事業マネージャーのための会計ファイナンスセミナー」(無料)を好評開催中。詳しくはこちらから。

2) コースの詳細はプログラム一覧パンフレットからご確認いただけます。

3) 法人向け研修を提供中。こちらのフォームよりお問合せください

 
 

昨年の振り返りと新年の抱負

カテゴリ: プログラム 作成日:2018年01月03日(水)

 

新年明けましておめでとうございます。昨年度も多くの方に大変お世話になりました。改めて感謝の意を表わさせていただきます。

 

180103

 

さて、新年ですので、昨年の事業の振り返りと新年の抱負について。なお、1年前の抱負はほとんど達成できていないので前向きに忘れることにします。事業を創るとは斯くも難しきということで。

 

昨年の振り返り

昨年を通じて累計の受講者が70名を越えました。人数としては少ないですが、受講生の方には1ヶ月~4ヶ月の時間をコースに使っていただく必要があり、多くの時間を受講生の方にコミットしていただけたことを嬉しく思います。

 

受講後少し経過してから「学びが役立っているか」を伺わせていただくことがありますが、何人かの方に経験談をインタビューで答えていただきました。より多くの方のお役に立ちたいと思っています。

 

創業当初から提供している「数字」関連のコース(ビジネス定量思考、財務会計、コーポレート・ファイナンス)については、内容がほぼ固まりました。若手~中堅の社会人向けだけでなく、(プロの卵である)投資銀行の若手社員向けにもコース提供するようになり、どこの会社にも出せる良い内容に仕上がりました(継続的に手は入れていきますが)。そのあたり(海外を含む)のビジネススクールに通うよりも、実務に役立つ内容を体系的に学べます。

 

その他に、論理力と戦略のモニターコースを開催しました。論理を自分で教材を作って教えることで、社会で必要な論理とは、国語、論証、コミュニケーションだとよくわかりました。なぜ社会で必要な論理のトレーニングが大学までの学校教育で万人に十分に施されないのかがよくわかりませんが、論理力は近日に正規コースとして開講します。

 

些末なことですが、授業を隔週と毎週のどちらで設定するか、といったコースのフォーマットについても子細を固め、個人向けのコース提供は毎週授業の形式に統一しました。これ、コースを受ける側にとっても提供する側にとってもかなり重要な問題だったりします。ちなみに、フォーマットの修正に合わせてコースの内容は拡充され、同じタイトルの内容でも現在は創業当初の2倍~3倍ぐらいのボリュームになっています。

 

コースを提供させていただく中で教えることの発見がさまざまにありましたが、特に、考えられない人は考えられていないことがわからない、学びのスピードには個人差が非常に大きい、という二点が大きな発見でした。当たり前に聞こえるかもしれませんが、学びと成長の関係や人材育成の検討において十分に考慮されていないポイントだと感じており、関連して新たなコースの展開を考えています。

 

今年の抱負(会社として)

個人向けの受講生募集のサイクルを確立する。特に、昨年末から開催を始めた会計ファイナンスセミナーが好評なため、これを軸に既存のコースをしっかりとまわしていきます。

 

コースの種類を増やす。昨年たどり着けなかった、戦略とセールスのコース開講は大きなテーマです。

 

法人向けの研修を新しいフォーマットで提供する。いくつかアイデアがあるため、新フォーマットでの研修提案に年始から積極的に取り組んでいきます。

 

本を出版する。これを今年の最大の目標にします。構想はできたので...。

 

他にもいくつかやりたいことがありますが、それはここでは秘密です(^^。

 

今年の抱負(個人として)

運動する。起業家は体が資本、ということで今年こそ。生活リズムのどこに運動を組み込むかを今日考えます。

 

家族との時間を増やす。昨年末に第二子が誕生したこともあり、家族との時間を少しでも増やしたいと思っています。もちろん、起業家としてはメイク・マネーが最大の家族孝行なのですが。。。

 

あと、将来やりたいこととして、踊れるようになりたいんだよな、ということを正月に思い出しました。30代の間にダンスの練習をはじめたい。

 

というわけで、本年も皆さま宜しくお願いいたします。

 

藤波由剛

 

============

1)「企画担当・事業マネージャーのための会計ファイナンスセミナー」(無料)を好評開催中。詳しくはこちらから。

2) コースの詳細はプログラム一覧パンフレットからご確認いただけます。

3) 法人向け研修を提供中。こちらのフォームよりお問合せください

 
 

仕事ができるとは&キャリアを考えるメッセージ

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年12月28日(木)

 

2017年も終わりを迎えようとしています。世界的に好景気でマーケットも盛り上がったものの内向く米国と大国の地位を盤石にする中国を起点に政治経済の枠組みが大きく転回しはじめた2017年、テクノロジーによるイノベーションは継続する一方で寡占化したインターネット企業や一部のテクノロジー企業が引き起こす社会問題の大きさやその傲慢さに焦点が当たった2017年、そして日本においては働き方改革や人生100年など唐突に「生き方」がクローズアップされた2017年でした。

 

171230 1

 

プリンシプルズとしては、これまでに累計で70名を超える方にさまざまなコースを受講いただき、やっと事業の船出ができたと言える一年でした。この記事では、年末年始に皆さんが将来のことを考えるにあたって参考になりそうな内容として、私が教えながら感じた「仕事が『できる』とはどういうことか」を少し紹介させてください。

 

まず、深く考えられるか

仕事ができる第一の要件は、深く考えられることだと思います。同じものを見ていても、深く考えて物事の本質に辿りつける人とそうでない人では、感じられることと見通せるものが違います。思考の深さの差は、何気ない一言にも表れ、周囲の人は何となくそれを感じることができます。業界の重鎮の〇〇さんの発言に説得力があるのは、タイトルと年季だけではなく、その一言に思考の深さによる裏打ちが感じられるから(のはず)です。

 

教えながらわかったのは、「深く考えられない人」は「自分が深く考えられていないことに気づけない」ということです。特に、戦略を教えた際にこれを痛感しました。例えば、「自分は顧客にどのような価値を提供しているか」「他社(や他者)とどのように差別化しているか」は、戦略と大げさに呼ばなくても、仕事で誰もが考えなければならない内容です。しかし、私が「まだ思考が浅く本質に辿り着けていない」というニュアンスで(具体的な)コメントをしても、それが伝わる方と伝わらない方がいます。伝わらない方は、そこで思考をやめてしまうので、思考の深掘りができません。もちろん、これは私自身のコメントの未熟さもあり、修行が必要と痛感しているところですが、「指摘されてもわからない人がいる」という感覚は新鮮な学びでした。本を読んでも仕事ができるようになるわけではないのも、同じ理由なのでしょう。読んでわかったような気になることと、本当にわかることの間には大きな差があるのです。

 

かく言う私も、自分自身で深く考えられていないことを痛感した一年でした。私の提供する教育プログラムは質と効率において際立っていると自負しています。なぜ質と効率が高いかについて方法論の根拠もあります。しかし、それは顧客(個人や会社)にとって私のプログラムを受講する直接の理由にはなりません。自社は〇〇に優れており他社と差別化できている、と思い込むことは、忌むべきプロダクトアウトの発想であり、顧客の課題を解決するマーケットインの発想になっていません。先日、ある著名な戦略コンサルティング会社の資料を見る機会がありましたが、その内容は理路整然と美しいプロダクトアウトの論理の塊でした。マーケットインには人間への深い理解と洞察が欠かせません。顧客の立場に立って考えるということが、いかに言うは易く行うは難しであるか、深く感じさせられた一年でした。

 

そして、想像力

仕事ができる第二の要件は想像力です(深く考えられることと想像力はきれいに分けられるものではありませんが)。なぜ〇〇が生じているのか、表面に出てこない理由を考えるにあたっては、見えない物を見る想像力が必要になります。今後何が起きるのか、優れた政治家がカレンダーを何か月も先まで掲げているのは、日程を見ながら将来起きることを想像しているのです。

 

ひとつ、質問をさせてください。会計に触れたことがなく数字が苦手だがさまざまな会社へ営業の経験がある40歳のAさんと、有名大学を卒業して大手企業の企画部門で働く25歳のBさんで、どちらの方がビジネスの現場で会計を「活用できる」ようになりやすいと思いますか。(私の教えた経験に根差しますがどちらも特定の人を指すわけではありません!)。

 

私見では、どちらかと言うとAさんの方が会計を活用できるようになりやすいです。面白いことに、両者は得意不得意が異なります。会計の考え方やルールを理解して問題を解けるようになるスピードは、Bさんの方が早いです。優秀な若者は、勉強も得意で、ひととおりのことをすぐにできるようになります。これから会計士を目指すならBさんの方がずっとハードルが低いでしょう。しかし、ある会計の数字を見た際に、その数字が何を意味するかをより考えられるのは、実はAさんです。なぜなら、Aさんは、さまざまなビジネス、さまざまな顧客とこれまでに接点を持ってきたので、想像力が豊かだからです。Aさんは計算はよく間違えますが数字を見ながらアイデアをポンポンと出します。Bさんは計算はすぐにできますがアイデアは多く出てきません。計算は多少練習すれば誰でもできるようになりますが想像力はすぐには育めません。ですので、Aさんの方が会計を「使えるようになる」スピードは早いです。

 

想像力とは、夢想することでは必ずしもありません。さまざまな現場を実際に見たり経験したりし、過去の経験と新しい課題を結びつけて連想できることが一般に多くを占めます。したがって、想像力を高めるには考える経験を多く積むだけでなくさまざまなビジネスあるいは人生経験を多く積むことが必要です。仕事に直接関連するという意味では、実際にいろいろな仕事をやってみることに勝るものはありません。一方で現場がある程度わかれば、本などから得られることも多くなります。

 

年末にHISの沢田会長兼社長が3ヶ月から半年間の世界旅行に出るというニュースがありました。

HIS社長、格安?一人旅へ 3-6カ月世界巡る 「刺激受けたい」「部下が育つ」(西日本新聞)

“一人旅の理由について、沢田氏は西日本新聞の取材に対し「最近は自分の発想が豊かでなくなった。世界の変化から刺激を受けたい」と説明。”

 

この感覚はよくわかります。私は、自分が取り組んでいる教育事業について想像力を働かせる上で必要な経験は過去の仕事や留学を通じて相応に積めていると考えています。しかし、パソコンと向かい合う時間がどうしても長くなりがちなので、意識して人と会ったり本を読む時間をとるようにしています。もう少ししたら、たまには海外をフラフラしないとなあと思うでしょうね。

 

さらに、実行力

私は、深く考える力と想像力が仕事をする上で最も重要だと思います。なぜなら、世の中の多くの実行は準備をともなうもので、準備ができていれば実行は「やる気」があればできるからです。

実行の仕方にもいろいろと技術がありますが、実行にあたってはスピードも重要です。本年の私の反省点のひとつは、事業のスピードがあまり出なかったことです。理由はいろいろとありますが、「これは明日やろう...」の小さな積み重ねが大きなスピードの差につながってしまった側面があります。反省しきりです。

 

自分が得意で長く続けられることは

さて、最後に将来の生き方やキャリアについて考えている方にメッセージです。

 

まず、何かを深く追うには時間がかかるということをお伝えしたいです。最近は、とにかく新しいものを経験してみよう、これまでの経験を捨て去ろう、というコメントが多く見られます。しかし、ホームベースなく外に出ていったら、想像力が高まるよりも根無し草になる危険の方が高いです。

 

先日、海外M&Aをテーマにした日本電産の永守会長兼社長の講演を拝聴する機会がありました。講演は大変素晴らしい内容でしたが、今回のテーマとの関連では、冒頭のコメントが大変印象に残っています。

 

「私は1973年に京都の自宅で日本電産を従業員3人で創業してちょうど45年になります」

 

この時、ああ、永守さんは今の日本電産を育てるのに45年かかったんだな、自分は現在やっていることを何年できるかな、と思いました。60代半ばまでならあと30年はできる。35年はできるだろう。しかし45年はどうだろうか。そのように思いました。

  

 

さすがに30年40年の時間軸で考えるのは一般には長すぎるでしょうが、申し上げたいのは、考える力にせよ、想像力にせよ、そこには考え抜きやり抜いた経験の蓄積が必要であり、それは一朝一夕には身につかないということです。何の高みを目指すかは自分で選ぶしかありませんが、人生のどこかで何を目指すか決めて時間をかけていただきたい。特に、いろいろなことに目移りしがちな若い方にはこの点を強く申し上げたいと思います。ただし、大企業で内向きの仕事を長年続けても世の中に役立つ軸を育てることはできません。自分はいったい何の山を登っているのか意識することは非常に重要です。

 

もうひとつは、人間には結局のところ向き不向きや好き嫌いがあるということです。私は、人間の能力や成長というテーマに深い関心があります。そのため、教える仕事に取り組んでいて飽きることがなく、飽きないから続けることができます。また、自分は何より得意なことは深く考えわかりやすく伝えることで(ビジネスの池上彰を目指せと言われることもあります笑)、大量の情報を早く処理するのは得意ではありません。投資銀行の現場で私は一線で働いてきましたが、コンサルティングや投資銀行のような世界ではどうしても大量の情報を早く処理することが求められます。やってできないことはないのですが、疲れますし、その点においては業界に秀でている人が多くいます。ですが、彼ら彼女らは深くわかりやすいかと言えばその点は私に強みがあります。だから、私は世の中の事象から一歩引いて考え教える仕事を始めました。

 

若い間は、自分の可能性を拡げるハードワークに時間を使うこともよいでしょう。しかし、中堅を過ぎたら、自分が得意で長く続けられることに時間を使うのが長い目で見た時に活躍と幸せにつながると思います。それは、大企業やスタートアップといった軸ではなく、仕事の内容と生き方の話です。私の友人知人でも、2017年は新たな仕事を始めた方が多くいました。30代半ばというタイミングがひとつの理由かもしれません。

 

何の山を登るか、何であれば自分は得意で長く続けられるか。それに向き合うことこそが、人生において仕事に向き合うことかなと思います。それから、考えすぎるのも考えもので、本当にモヤモヤするなら実行に移してみることをお勧めします。

 

本年も大変お世話になりました。皆さま良いお歳をお迎えください。

 

藤波由剛

 

============

1)「企画担当・事業マネージャーのための会計ファイナンスセミナー」(無料)を好評開催中。詳しくはこちらから。

2) コースの詳細はプログラム一覧パンフレットからご確認いただけます。

3) 法人向け研修を提供中。こちらのフォームよりお問合せください

 
 

働き方改革は生産性競争の号砲(2)~事業の全体観の理解とハードスキル

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年08月07日(月)

 

以前、働き方改革がどのように企業の人材育成に影響を与えるかについて書きました。この投稿は多くの方より反響をいただきました。今回は同じく働き方改革に関連して、事業の全体観の理解とハードスキルの重要性について書いてみたいと思います。

 

170807

仕事への取り組み方に、自信がありますか?

 

事業の全体観を持って判断することの重要性

日本交通の川鍋会長が、「重要なことよりも、結果が出ることをやれ」 日本交通・三代目社長が、1900億円返済の過程で得た経営哲学とは?という記事の中段で、大口の赤字顧客に値上げをお願いしたエピソードをお話されています。以前、このお話を講演で伺ったことがあるので、おそらく川鍋会長にとってこの時期の定番の講演ネタだったのだと推測しますが、非常に面白い事例だなと思います。

 

170807 2

出所:上記ログミーの記事(http://logmi.jp/23351)

 

多数の大口顧客と赤字取引をしていれば、会社が赤字になるのはある意味当然でしょう。しかし、この顧客の値上げはできないという思い込みか、売上さえ立てば利益は社員に関係がなかったのか、理由はわかりませんが、会社の存続が危うくなってもそれまでこの取引は続けられていたわけです。現場でどれだけ社員が一生懸命働いても、やっている仕事が赤字であれば会社は傾くばかりです。これは、事業の全体観を把握することが重要である、興味深い例のひとつだと思います。

 

事業の全体観を理解するためには、ハードスキルが必要

さて、上記の例は結論だけ見れば当たり前に見えますが、顧客ごとの売上と利益(率)がなければわかりません。顧客ごとの売上高を把握していない会社はあまりないと思いますが、顧客ごとの利益(率)を把握できない会社はそれなりにあると推察します。この数字を出すためには、管理会計への会社としての取り組みが必要になります。また、この数字を読み取るためには、会計の基本的な知識(というほどのものでは今回はありませんが…)と数字から意味を読み取る基本的な素養が必要です。

 

管理会計の細かなやり方は、経理部門で把握をしていれば十分と思います。しかし、「どのような数字を見れば顧客ごとの儲けの状況がわかるか」「その数字がどのような意味を持つか」は、経営や事業に携わる人が理解をしていなければなりません。そうしなければ、打つべき施策を考えることができません。

 

このように、会計は事業の状況を数字で表す言語であり、ビジネスをリードする人であれば立場によらず基本を必ず理解している必要があります。ところが、日本企業の現場では、必ずしもこの基本が理解されていません。私が聞いたところによれば、ある大手メーカーの開発の現場では、新しい開発の方向性や投資判断にあたり、会計やファイナンスの基本的な知識がまったくないメンバーで意思決定が行われ、何を以って決めたのかよくわからないという状況がしばしば見られるそうです。何とも恐ろしい話です。

 

ハードスキルを「聞いたことがある」のと「使える」のは全く異なる

私は、会社のマネージャー層以上であれば、(1)会計、(2)戦略とマーケティング、(3)セールスとコミュニケーション、の基本は、最低限学んでいる必要があると考えています。これらは「MBA的」なハードスキルと言えるでしょう。雑誌業界の方によると、MBAは雑誌のテーマとしては既に時代遅れだそうです。これらをテーマにした本はあふれており、商業的には確かに時代遅れでしょう。しかし、情報が氾濫していて聞いたことがあるということと、実際に自分で使いこなせることは全く違います

 

やっとタイトルの生産性競争の話にたどり着きますが、生産性を上げるためには、まず何よりも儲かる事業をやらなければなりません。そして、事業で儲けるには、自分が取り組んでいる事業にはどのような価値があって、どのように儲けているのかを理解するすることが必要です。全体観への理解がなければ、自分の努力は赤字の顧客に対して安値で一生懸命サービスを提供しているだけかもしれないのです。

 

私はBtoBの経験が長く、経営や購買の現場で多くの企業や個人を見てきましたが、「自分がやっている事業の価値は何なのか」「自分のやっている事業の儲けの仕組みは何なのか」について、理解が十分でない方は驚くほどに多いです。特に大企業の方は、これらをしっかりと理解しなくても強固な仕組みで仕事がまわるからこそ、却って考えていない、考えられないケースが少なくありません。もちろんこれらは案外難しいテーマで私も自分で事業を起ち上げながら日々自問していますが、これらのテーマを考え抜くにはMBA的なハードスキルが必要で、その理解が不十分で考える土台ができていない方も少なくないと強く感じています。

 

日本企業が抱える大きな問題のひとつは、この基本的な事業を見る際のハードスキルが、本来は獲得されているべき社員に十分に学ばれていないことです。ただ一方で、だからこそ日本の会社の経営にはまだまだ伸びしろがあると私は捉えています。これらの内容を本当に身につくプログラムを提供することが、当社の使命だと考えています。だって皆さん、無駄なことはやりたくないじゃないですか。どうせ働くなら、ちゃんと儲けて、余裕を持って生きたいですよね。

 

============

1)「企画担当・事業マネージャーのための会計ファイナンスセミナー」(無料)を好評開催中。詳しくはこちらから。

2) コースの詳細はプログラム一覧パンフレットからご確認いただけます。

3) 法人向け研修を提供中。こちらのフォームよりお問合せください

なぜマネージャーには抽象的な思考力が求められるか

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年08月03日(木)

 

前回は、「考え方」を学ぶこと、「考え方」を指導することの重要性について触れました。今回は、このテーマに関連し、なぜマネージャーには抽象的な思考力が求められるかを説明します。

 

170803

「あ、そうか!」とひらめく瞬間、ありますか?

 

抽象的に考えられなければ指導ができない

ある営業部長の方から聞いた話をご紹介します。その方には、営業として優秀な部下がいました。しかし、その部下をマネージャーに昇格させることは難しく、営業部長は悩んでいらっしゃいました。なぜなら、その優秀な営業担当者は、論理的に考えることができなかったからです。

 

彼は営業としては優秀で顧客にかわいがられる「才能」を持っていました。ですので、営業成績は良かったそうです。しかし、上司への報告はいまいち不明瞭で何が起きているのか聞いてもよくわからないことがあり、教育との関係では後輩の指導がうまくできないということでした。なぜなら、自分がやっていることや考えを、論理的に後輩に伝えることができないからです。

 

ここで、「論理的に考えて伝えることができない」という課題には、ふたつの要素が含まれています。ひとつは、結論と理由をセットで適切に論証をすることができないという「論理力」の問題。もうひとつは、自分が実際にやっていることを一段高い視点からまとめること、考え直すことができない「抽象的思考力」の問題です。ここでは、後者をもう少し見てみましょう。

 

抽象と具体の思考のレベル

「抽象的に思考する」という表現は、抽象的でわかりにくいですので、具体例をあげます。例えば、Excelに数字を打ち込む際は右揃えでの表示が基本です。右揃えでなければパッと見た時に桁数をつかみにくいからです。Excelを普段使わない方でも、銀行通帳の記帳やインターネット・バンキングの画面などをイメージすればすぐにご理解いただけると思います。

 

では、後輩がExcelで数字を「中央揃え」で縦に順番に入力していた場合、どのような指導が考えられるでしょうか。

 

170803 2

違いは一目瞭然です

 

最も具体的な指導は「数字は右揃えで入力するように」です。これは、作業レベルの指示です。これに「なぜか」と理由を付け加えるわけですが、以下のレベルが考えられます。

 

1)右揃えにしなければ、桁がわかりにくいから

2)上記に加えて、人間はそろっている情報を無意識にひとかたまりの情報と捉えるので、相手に伝わりやすいから

3)上記に加えて、人間はわかりやすい情報に無意識にポジティブな感覚を持つので、数字で主張したいことが相手に承認されやすいから

 

上記の説明はいずれも本当ですので、いずれの説明をすることもできます。そして、読んでいただくと、1)から3)にかけて説明が抽象的になっていることがわかります。1)は非常にわかりやすいですが、2)はデザインの考え方で、3)は心理学の考え方です(もう一歩踏み込むと脳科学の領域ですが、そこまでは触れません)。これらはいずれも、「なぜ」という考え方を説明しています。

 

ここで理解いただきたい点は、どの考え方のレベルまで理解するかによって、応用の範囲が異なることです。1)は数字を資料にまとめる時にしか使えない考え方ですが、2)は資料作成一般に応用できますし、3)はさらに広くプレゼンテーションや日々のコミュニケーションの取り方、さらには服装のコーディネートにまで応用できる幅広い概念です。

 

優れたマネジメントになるためには抽象と具体の往復が求められる

教えるにせよ、自分の仕事に活かすにせよ、まずはこのような抽象的な考え方をできなければ、優れたマネージャーになることはできません。それは、ある時は自分の経験から考え抜くことです。例えば、異なる経験から共通して得られる教訓や、似ているけれども異なる結果を生んだ経験から何が差だったかを考えることは、自分の経験から一歩抽象的な考え方を引き出すことに他なりません。また、本や教育から学ぶこともできれば、友人との会話から考え方のインスピレーションを得ることもできます

 

ただし、本や教育などで学んだ考え方を実務で使う場合には、抽象的な考え方だけではだめで、それが具体的にどのように仕事あるいは作業に落とせるのか、具体的にイメージできなければなりません。具体化に自ら試行錯誤することで、本や教育から「借りてきた」考え方を自らのものとすることができます。そして、自らの具体的な経験と抽象的な考え方を往復することで、自分なりの「考え方」が出来上がっていきます。

 

指導という観点では、自分が考え方を理解した上で、相手に伝わるレベルで考え方を伝えることが重要です。新卒社員には「数字は桁が揃っていないとわかりにくいから右揃えにするのだよ」という指導で十分ですし、それ以上を伝えてもピンと来ないかもしれませんが、資料作成をバリバリこなす社員であればデザインの考え方まで知っておいてもらいたいところです。

 

また、ビジネスをリードするという意味では、日々の仕事をこなすフィールドから、自ら仕事を作り出したり仕組みを考えたりするフィールドに移るには、このような抽象的な思考が求められます。そして、優れたビジネスパーソンは、抽象的に本質を突くことが得意で、社会・経済の動きや異業種の動きから将来を予測し、自社のビジネスにヒントを得ることができます。

 

抽象と具体の往復は筋トレのようなもの

自分の場合、若い頃はどちらかと言えば抽象的な思考に考え方が偏っていました。それは大学で政治という「大きな」テーマばかり追いかけていたからかもしれません。逆に、新卒での法人営業は現場がすべての仕事でした。その後、投資銀行で企業分析や交渉を、現在は自社の経営を経験し、これらすべてのおかげで、今では抽象から現場まで一貫してイメージする力がかなりついたと思います(営業の現場経験も現在の自分に至る道のりで非常に重要であったことをここで強調したいと思います)。抽象と具体の往復は筋トレのようなもので、キャリアのマラソンを通じてずっと高めていかなければならないものなのでしょう。

 

最後に、今回のテーマと教育・研修の関係に触れます。「どのレベルの考え方で相手とコミュニケーションをとるべきか」は、相手の思考レベルによるため、本来は相手によって指導の仕方を変えることが望ましいです。優れたオン・ザ・ジョブ・トレーニングはそのような師弟関係です。しかし、多数の受講生がいる教育・研修では、さすがにテーラーメードのコミュニケーションをとることはできません。したがってポイントは、いかに受講生のレベルを合わせて最大公約数をとりやすくするか、いかに受講生にとって「ちょうど良い」思考のレベルで考え方を伝えるか、です。作業レベルの教育は広がりに欠け、脳科学の話は実務から遠すぎます。ここでどのようなレベル選択するかは、教育を設計する側の対象への理解度とアートなセンスが問われる部分です。ですので、同じテーマで教育・研修が企画されても、内容が同じということはあり得ません。設計者により、内容は間違いなく大きく異なります。

 

============

1)「企画担当・事業マネージャーのための会計ファイナンスセミナー」(無料)を好評開催中。詳しくはこちらから。

2) コースの詳細はプログラム一覧パンフレットからご確認いただけます。

3) 法人向け研修を提供中。こちらのフォームよりお問合せください

学びと指導において重要なことは何か

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年08月01日(火)

 

前回は、学びにおけるタイミングの重要性を強調しました。それでは、正しいタイミングに何か必要なことを学ぶ機会があったとして、どのように学ぶのが効果的、指導する側からするとどのように指導するのが効果的なのでしょうか。学びと指導はコインの表裏ですので、ここでは指導の視点で見ていきます。

 

170801

 

指導の仕方はふたつ

前回と同様に就職活動を例に出して、学生から志望動機を見て欲しいと言われたとしましょう。その際に、指導の仕方はふたつあります。ひとつは、テニヲハを含めて直接書き換えてしまう方法。もうひとつは、読み手の立場から何に気を付けるべきか考え方を伝えて、問題点は指摘するものの、どうしたらいいかは示さないやり方です。

 

アウトプットに手を入れてしまうと

前者の利点は、時間がかからない、良いものがすぐできる、ということです。なぜなら、社会人経験豊かなあなたが書き換えてしまうわけですから、あっという間にできあがるはずです。職場での先輩と後輩を思い浮かべていただけば、ここでもふたつの対応がありうることがわかるでしょう。「書き換えたよ」と返して終わりのパターンと、「ここをこう書き換えたよ、なぜなら」と説明を加えてあげるパターンです。一般的に、後者の方が親切な先輩だと見なされます(笑)。

 

もちろん、説明をしないよりはした方がよいですが、説明をした場合でもあなたが直接なおしてしまった場合、相手の「なぜ修正されたのか?」「次は自分はどうしたら良いか?」への理解度は十分に高まらないことが多いです。なぜなら、人間というのは不思議なもので、説明を聞いただけではできるようにならない生き物だからです。これは私が授業をしていても強く感じるのですが、ビデオでひととおりの説明をしていても、授業での質問に答えらえる人は少ないです。スキルや考え方は自分で考えてアウトプットをしなければ、身につかないのです。

 

答えを教えないで根気よく指導すると

さて、もうひとつの答えを示さずに考え方だけを示して、自分で試行錯誤してもらう指導法。これは、非常に時間がかかります。かつ、相手がなおした内容がまたあなたの眼鏡にかなわないかもしれません。また、指導の仕方も非常に難しいです。答えは教えず、しかし、相手が考えられるぐらいにガイドラインを示す、というのは、なかなか難易度が高いです。

 

しかし、このやり方をとれば、相手はなぜ自分の書いた志望理由への評価が低かったかを考え、理由を理解した上で修正することができます。最大の利点は、志望理由の書き方のポイントや、読み手の気持ちを理解できるので、次に志望理由を書くときに同じ間違いを犯さないということです。

 

「考え方」を理解しており自走できるかが「頼りになるか」の大きなポイント

これは非常に重要なポイントですが、仕事においては「考え方」を理解しているかどうかで、その人が頼りになるかどうかに決定的に差がでます。1から10まで指示しないといけない人には、だんだんと何かを頼むがの億劫になってきます。頼むのも時間をとられるし、頼むことを考えるという作業はあなたの思考エネルギーを奪うからです。頼りになるのは、自分で考えて自走できる人です。多少わからないところがあっても、「ここまではこう考えたが、ここがわからないので教えて欲しい」と言ってもらえれば、1から10まで指示をしなければならない人に比べると圧倒的に安心感を持って「一緒に」仕事をすることができます。

 

ただ、考え方を教えるのは時間がかかって大変です。ですので、どうにも明日の朝までに片づけなければいけない仕事がある、という状況では、そこまで手がまわらなくても仕方がありません。しかし、長い目で見れば、考え方を教えて人を育てることができるかどうかで、職場の戦力が充実するかは決まります。

 

「考え方」を、学ぶ、伝える

人材育成をしない職場に明日はなく、それは「考え方」をどれだけ伝えることができ、人を育てられるかにかかっています。というわけで、今回の結論は、教える際には「結論」や「作業の仕方」だけを伝えるか、「考え方」を教えるか、があり、後者の方が時間もかかるし大変だが、長い目で見ると人材育成には避けて通れない道、となります。

 

============

1)「企画担当・事業マネージャーのための会計ファイナンスセミナー」(無料)を好評開催中。詳しくはこちらから。

2) コースの詳細はプログラム一覧パンフレットからご確認いただけます。

3) 法人向け研修を提供中。こちらのフォームよりお問合せください

学びにおけるタイミングの重要性

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年07月31日(月)

 

プリンシプルズ代表の藤波です。私は投資銀行でM&Aの第一線で働いていましたが、約1年前にMBAレベルの実践的なビジネス教育の会社を起業しました。「教える仕事」ははじめてでしたが、教えること、学ぶことについて、未経験だからこそ試行錯誤をして多くのことを学ぶことができました。実践を通じて考えたことについて、いくつかご紹介をしていきたいと思います。

 

170731

 

今回のテーマは、「タイミング」です。研修の内容が社員に届かない、授業を学生が熱心に聞かない、ときにはあなたのアドバイスが部下に響かない、これらには多くの場合において共通するいくつかの理由があります。その中で最も重要なことは、相手が内容を受け入れる準備ができているか、正しいタイミングか、ということです。

 

キャリアについての優れた考え方は多くの書籍にまとめられている

わかりやすい事例として、キャリアや就職活動のお話をしたいと思います。私は一時期、キャリアの考え方について文献を集中的に読みました。世の中に、優れたキャリア・アドバイザーが少ないような気がしたので、そもそもの考え方をしっかりと学んでみようと思ったのです。

 

その結果、キャリアについての優れた考え方は、だいたいのところ確立されていると私は結論づけました。この不確実な時代に「え!」と思われる方もいるかもしれませんが、世の中には、研究者にも実務家にも「良いキャリアを歩むためにどうしたら良いか」「仕事を通じて幸せになるには」というテーマについて人生をかけて取り組んでいる人が山ほどいるのです。

 

例えば、リクルートワークス研究所の大久保幸夫氏の『キャリアデザイン入門[I]基礎力編』は非常に優れていると思います(最近、第2版が出たようです)。キャリアを探索する筏(いかだ)下りと、ある程度の専門を決めて登る「山登り」の例えなどは、非常に明確かつ有用です。

 

もっとカジュアルな本では、例えば同じくリクルートでエグゼクティブ・サーチのお仕事をされている森本千賀子氏の『HONKI SWITCH ON 本気になれば人生が変わる!』も良い本です。自分が熱意を燃やせる仕事に就くことで変わる人と会社の事例が豊富に取り上げられています。

 

米国で著名なキャリアの本はリチャード・ボウルズ氏の 『適職」と出会うための最強実践ガイド』です。自分に合った仕事に出会うためには、というアプローチでパラシュートに色分けしたりするのですが、内容の本質はご紹介した二冊と同じです。

 

その他に、多くの本や記事で紹介される「一定水準を超えると年収よりもやりがいが幸せを感じるには大事」という説も、社会心理学では定説とされている他、私の周りの人たちを見ても違和感がなく、まあそうなんだろうなあ、と思います。キャリアの本は流行り廃り含めて多くありますが、このような「幹」の理論でお目にかからない新しい主張がなされることは極めて稀です。

 

以上で申し上げたいことは、キャリアで幸せになりたいのであれば、知っているべき考え方は本にだいたい書いてあり、特に奇をてらったことは何もないということです。これは、キャリアと人生は人それぞれであるものの、人と仕事の関係はわりとシンプルということに起因するのかもしれません。

 

なぜ、就職活動中の学生へのアドバイスは徒労に終わることが多いのか

さて、ここで就職活動中の学生を例にしましょう。これまた一時期、私は就活中の学生さんに積極的に会って、人生相談に乗ったり、キャリアのアドバイスをしたりしていました。その時に、キャリアについての大事な考え方を、学生さんにもわかるような言葉で、できる限り体系的にお話するように心がけました。学生さんに「これらの本を読んだらいいよ」と伝えるのはあまりに不親切かつ学生さんも忙しいだろうから、せめてかみ砕いて説明しようと思ったわけです。

 

しかし、その時にお話しした内容の99%は、学生さんに伝わっていなかったと思います。伝わったか伝わらなかったかは、相手の表情や受け答え、そしてその後の行動を見ていればわかります。なぜ伝わらないか?というと、理由のひとつは、アドバイスをしたタイミングが相手にとって正しいタイミングではないからです。

 

例えば、「自分の性格は簡単には変えられないので、性格に合った仕事をした方が幸せになれる」というアドバイスをしても、「性格に合っていない仕事をした経験」がないと、なかなか伝わりません。そこで、授業や部活など、相手にひきつけた例えで話をするわけですが、最後は「そもそも社会人として働いたことがないので仕事で求められることがわからない」というモヤモヤがあるので、やはり伝えるのは至難の業です。

 

自分でやってみて失敗した後が一番アドバイスの効果がある

では、いつがアドバイスをする効果的なタイミングかと言えば、それは相手が失敗した時です。例えば、面接指導で最も効果があるのは、「いけると思った面接がダメだった後」です。その瞬間は、「なぜ駄目だったのだろう」「次は失敗できない」という思いが強いので、学生さんはアドバイスを真剣に聞きますし、行動も変わります。

 

これは、仕事でも同じです。新入社員の指導で効果が最もあるのは、「あらかじめ指導したことを、新入社員が守らず失敗して、もう一度指導したとき」です(笑)。やんちゃな新入社員も、この時ばかりは「言われたことを忘れていて失敗した」という負い目と、「確かにアドバイスどおりにした方がいい」という思いがあるので、行動を変えます。

 

なお、先ほどのキャリアの場合は、「このキャリアは自分に合ってなかったかも…」と実感できるのは働き始めてしばらく経ってからなので、気づいたら時すでに遅しとなりやすいです。学生さんが相手のキャリア・アドバイスの最大のハードルは、そもそも学生さんは社会を知らないことであり、これは「学生さん」である限り、覆せないと思います。したがって、第二新卒で仕事を変えることを前提に、会社も学生も就職活動・採用に取り組むのが、社会として雇用のミス・マッチを防ぐという意味では最も合理的というのが私の考えです(なお、長期インターンをすればミス・マッチが減るという考えがありますが、米国の学部生を見ていると、効果がすごく期待できるとは私は思いません)。

 

研修も正しいタイミングで行うことが大事

私が事業とする企業研修においても、この「正しいタイミング」で行うことは、研修の効果を最大化する上で非常に重要だと思います。例えば、新入社員研修を入社直後に数か月単位で行う企業がありますが、そのやり方が最適かは検証が必要です。仕事をする上で最低限の内容は多少効率が悪くても事前に研修が必要でしょうが、それ以上の研修は、現場を経験して、「自分がいかにできないか」を知り、「実際にどんなことが仕事で行われているか」 を少しでも見てからの方が、圧倒的に効果が出ると思います。ただし、「最低限の内容」には、仕事によって差があるでしょう。営業であれば、ビジネス・マナーとパソコン・スキルで十分でしょうが、エンジニアの場合は基本的なプログラミングはできないとさすがに現場に入ることすらできないでしょうから。

 

より難しいのは、年次や役職に基づく研修です。特に年次は、人によって、仕事内容も成長スピードも異なるので、ただ集めて研修をすると「同窓会」で終わってしまう可能性があります。それぞれの人が自らの課題意識に基づいて研修を「選択」する手あげ式の方が、本当に参加者に役立つ研修という意味では望ましいでしょう。

 

============

1)「企画担当・事業マネージャーのための会計ファイナンスセミナー」(無料)を好評開催中。詳しくはこちらから。

2) コースの詳細はプログラム一覧パンフレットからご確認いただけます。

3) 法人向け研修を提供中。こちらのフォームよりお問合せください

働き方改革は生産性競争の号砲(1)~人材育成への影響

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年07月12日(水)

 

先日、ある会社の若手社員の方を対象にビジネス・スクールのことやキャリアのことをお話しをする機会があり、その中で働き方改革は生産性競争の号砲というお話をしました。

 

170712

人にとっても会社にとっても最も希少な資源は時間

 

成長には仕事の質と量が必要

自分のことを振り返ってみると、これまでよく働いてきました。最初の会社でも遅くまで働いていましたし、投資銀行でも遅くまで働いていました(現在も、世間一般よりは長く働いていますが、若いときほどの労働時間ではありません)。一方で、自分が何かのスキルを身につけたり、思考が大きく成長したタイミングは、そのようによく働いた時だったと思います。結局のところ、成長には質と量の経験が必要で、それなりの量の良い仕事に、良い上司や同僚とともに取り組み、自分に負荷をかける期間が、成長のためには必要ということです。

 

ただ、同じ経験を若い人にお勧めはまったくしません。ずいぶんと昔の話ですが、平日は午前2時まで働いて休日出勤する生活を2ヶ月ぐらい続けると、だんだんと生気がなくなってきて世界がモノトーンになってきます。歩くのも面倒になってくるのでやたらとタクシーに乗りたくなったりとか(笑)。これはまったくお勧めできるものではありません。単純に不健康で寿命が縮みます。

 

インプットの仕方を変えずに働く量に制限がかかると

しかし、働き方改革により労働時間にキャップがかかると、「よくわからないから時間でカバー」ということができなくなります。加えて、そのように一時的に負荷をかけて成長するということもできないわけです。成長のために質と量が必要ということは、普遍的な真理と言えるので、すでに実力がある人は効率よく働けばハッピーでしょうが、これから力をつける人はどうしましょうという話になります。また、中堅層も時間を意識するようになるので、若手社員への指導(OJT)に割ける時間は必然的に減少するでしょう。若手社員にとっては、量だけでなく、先輩から学ぶという意味での質にもキャップがかからざるを得ないわけです。

 

それでも成長をしたいのであれば、それは業務外で自分に自分を投資するということになります。私がやっているビジネス・スクールという事業には、そのようにOJTで支えられなくなった会社内の教育ニーズを受け止めるという強い意義があると考えています。

 

働き方改革は日本企業の人材育成力を損なうリスクを内包している

よりマクロな視点で言えば、働き方改革は日本企業を弱くする危険があると思います。雇用の専門書には、成果主義の導入により個人業績が重視されるようになった結果、OJTが減少して日本企業の競争力が弱まったという記述がしばしば出てきます。働き方改革において「業績も仕事のやり方も変えずにとにかく早く帰れ」と命ずるのは無理な話ですが、仕事のやり方を変えて成果を出して早く帰るようにした場合であっても、OJTの減少による若手社員の育成スピードの低下という課題は容易には解決できないと思います。結果として、社外における教育・研修事業へのニーズは高まるはずです。

 

さらに考えを進めると、働き方改革は日本企業の採用慣習が欧米型に変化するひとつのきっかけとなる可能性があります。日本企業の新卒社員のポテンシャル採用は、これはこれで一定の合理性がありますが、社内でじっくりと育てられることが前提となったシステムです。とにかく成果を決まった時間であげられる人でなければという話になれば、採用時点で業務に関連するスキルをどれだけ身につけているかを問われる採用スタイルに徐々に日本企業が移行してもまったく不思議はありません。

 

OJTの役割の縮小は育成の外部化を招く

冒頭にご紹介した説明会では若い方へは「早く帰って毎日飲み遊んでいるだけだと10年後に苦労するぞ」というメッセージを結論としてお伝えしました。より広く社会人の皆さんへは学び続けることの大切さを、企業の経営者と人事の方には人材育成への取り組み方を抜本的に改める必要が早晩出てくることをお伝えしたいと思います。

 

つまるところ、行きつく先は企業による人材育成の外部化の進行であり、社員個人が自分の成長により責任を持たなければならない社会の到来です。当社としては、そこでしっかりと社会に貢献できるよう、本当に身につくビジネス教育を実践してまいりたいと思います。

 

※2017年8月7日に内容を一部修正しました

 

============

1)「企画担当・事業マネージャーのための会計ファイナンスセミナー」(無料)を好評開催中。詳しくはこちらから。

2) コースの詳細はプログラム一覧パンフレットからご確認いただけます。

3) 法人向け研修を提供中。こちらのフォームよりお問合せください

議決権行使助言会社とは

カテゴリ: 会計・ファイナンス 作成日:2017年06月20日(火)

 

Newspicksで議決権行使助言会社に関する記事を見かけました。

 

【深層レポート】総会屋に代わる火種。野村證券「仁義なき戦い」

https://newspicks.com/news/2311788/body/?ref=index 

 

議決権行使助言会社とは、機関投資家が投資先企業の株主総会で議案に賛否を表明するにあたり、参考としてもらうレポートを配信する会社です。ISSとグラスルイスが有名です。

 

これらの会社の顧客は、機関投資家です。特に、欧米の機関投資家は、これら議決権行使助言会社のレポートを参考にすると言われています。機関投資家は株主総会で議案に賛否を表明しなければなりませんが、投資先の企業は非常に多く、個別の議案を十分に吟味するリソースが自社にはないため、議決権行使会社のレポートを参考にします(意地悪な言い方をすれば、あまり個別議案の吟味にリソースを割くインセンティブがないので、議決権行使助言会社に判断を「丸投げ」しています)。

 

議決権行使助言会社は、助言をするだけ…とも言えますが、それなりに機関投資家に影響力があるので、個別の議案になぜ賛否を表明するのか、アカウンタビリティが機関投資家や株主総会を開催する企業から求められます。そのため、議決権行使助言会社は、どのような考え方で議案の賛否を判断するか、各社のホームページでガイドラインを公開しています。例えば、日経ビジネスの以下の記事は、直近で変わったISSとグラスルイスのガイドラインについて解説しています。

 

ISSとグラスルイスの「新助言方針」とは

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/15/275626/012000023/

 

Newspicksの記事の中で、「議決権行使助言会社は個別の議案の背景をきちんと理解しているのか」という趣旨のコメントが出てきますが、議決権行使助言というビジネスが構造的に抱える問題は、株主総会が一時期に集中する場合、十分なスタッフを手当てしにくい点です。日本企業の場合で言えば、日本企業の株主総会は6月に集中するので、日本企業を担当する議決権行使助言会社にとって5月から6月は超繁忙期です。しかし、超繁忙期に合わせてスタッフを十分に配置すれば、他の時期はやることがなく人件費がかさむことになります。

 

したがって、議決権行使助言というビジネスのキモは、いかに少人数で顧客である機関投資家からの質問に耐えうる水準の助言レポートを発信するかという点にあります。よって、議決権行使助言会社のガイドラインは、機関投資家や企業に対する説明責任を果たすと同時に、このガイドラインに沿って限られた人数である程度は機械的に判断するからある程度それは勘弁してくださいねというエクスキューズの役割も担っていることになります。また、議決権行使助言会社としては、ガイドラインに反する助言を出そうとすると、個別事情を丁寧に理解して機関投資家に説明を尽くさないとならないので(面倒ですから)、なるべくガイドラインに沿って助言を出そうという強いインセンティブが働くことでしょう。

 

このような構造を考えると、自社の意に反するガイドラインを出されてしまった時点で、議決権行使助言会社の意に反することをしようとしている会社にとっては負け戦に入っているということになります。議決権行使助言会社の行動はグローバルなコーポレート・ガバナンスのトレンドに沿っているので、そもそもコーポレート・ガバナンスのトレンドにおいて日本としての意見をはっきりと打ち出すこと、さらに日本市場向けのガイドラインの作成において日本の実情に合わない内容が入り込まないようコミュニケーションをとることが必要なのでしょう。おそらくこのようなことに取り組んでいる方も経団連や学会などにいらっしゃるのではないかと思いますが、グローバルな規範がビジネスにどのように影響を及ぼしているかという一つの例と言えるかもしれません。

 

ところで、Newspicksのタイトルでは、議決権行使助言会社が総会屋と並べられていますが、アクセスを集めるためとはいえさすがにこのタイトルはいかがなものでしょうか。議決権行使助言会社が、日本のコーポレート・ガバナンスの改善に一定の役割を果たしていることは明らかです。議決権行使助言会社との対話を通じて、日本のコーポレート・ガバナンスが健全に発展していくことを期待したいと思います。

 

============

1)「企画担当・事業マネージャーのための会計ファイナンスセミナー」(無料)を好評開催中。詳しくはこちらから。

2) コースの詳細はプログラム一覧パンフレットからご確認いただけます。

3) 法人向け研修を提供中。こちらのフォームよりお問合せください