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働き方改革は生産性競争の号砲(2)~事業の全体観の理解とハードスキル

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年08月07日(月)

 

以前、働き方改革がどのように企業の人材育成に影響を与えるかについて書きました。この投稿は多くの方より反響をいただきました。今回は同じく働き方改革に関連して、事業の全体観の理解とハードスキルの重要性について書いてみたいと思います。

 

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仕事への取り組み方に、自信がありますか?

 

事業の全体観を持って判断することの重要性

日本交通の川鍋会長が、「重要なことよりも、結果が出ることをやれ」 日本交通・三代目社長が、1900億円返済の過程で得た経営哲学とは?という記事の中段で、大口の赤字顧客に値上げをお願いしたエピソードをお話されています。以前、このお話を講演で伺ったことがあるので、おそらく川鍋会長にとってこの時期の定番の講演ネタだったのだと推測しますが、非常に面白い事例だなと思います。

 

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出所:上記ログミーの記事(http://logmi.jp/23351)

 

多数の大口顧客と赤字取引をしていれば、会社が赤字になるのはある意味当然でしょう。しかし、この顧客の値上げはできないという思い込みか、売上さえ立てば利益は社員に関係がなかったのか、理由はわかりませんが、会社の存続が危うくなってもそれまでこの取引は続けられていたわけです。現場でどれだけ社員が一生懸命働いても、やっている仕事が赤字であれば会社は傾くばかりです。これは、事業の全体観を把握することが重要である、興味深い例のひとつだと思います。

 

事業の全体観を理解するためには、ハードスキルが必要

さて、上記の例は結論だけ見れば当たり前に見えますが、顧客ごとの売上と利益(率)がなければわかりません。顧客ごとの売上高を把握していない会社はあまりないと思いますが、顧客ごとの利益(率)を把握できない会社はそれなりにあると推察します。この数字を出すためには、管理会計への会社としての取り組みが必要になります。また、この数字を読み取るためには、会計の基本的な知識(というほどのものでは今回はありませんが…)と数字から意味を読み取る基本的な素養が必要です。

 

管理会計の細かなやり方は、経理部門で把握をしていれば十分と思います。しかし、「どのような数字を見れば顧客ごとの儲けの状況がわかるか」「その数字がどのような意味を持つか」は、経営や事業に携わる人が理解をしていなければなりません。そうしなければ、打つべき施策を考えることができません。

 

このように、会計は事業の状況を数字で表す言語であり、ビジネスをリードする人であれば立場によらず基本を必ず理解している必要があります。ところが、日本企業の現場では、必ずしもこの基本が理解されていません。私が聞いたところによれば、ある大手メーカーの開発の現場では、新しい開発の方向性や投資判断にあたり、会計やファイナンスの基本的な知識がまったくないメンバーで意思決定が行われ、何を以って決めたのかよくわからないという状況がしばしば見られるそうです。何とも恐ろしい話です。

 

ハードスキルを「聞いたことがある」のと「使える」のは全く異なる

私は、会社のマネージャー層以上であれば、(1)会計、(2)戦略とマーケティング、(3)セールスとコミュニケーション、の基本は、最低限学んでいる必要があると考えています。これらは「MBA的」なハードスキルと言えるでしょう。雑誌業界の方によると、MBAは雑誌のテーマとしては既に時代遅れだそうです。これらをテーマにした本はあふれており、商業的には確かに時代遅れでしょう。しかし、情報が氾濫していて聞いたことがあるということと、実際に自分で使いこなせることは全く違います

 

やっとタイトルの生産性競争の話にたどり着きますが、生産性を上げるためには、まず何よりも儲かる事業をやらなければなりません。そして、事業で儲けるには、自分が取り組んでいる事業にはどのような価値があって、どのように儲けているのかを理解するすることが必要です。全体観への理解がなければ、自分の努力は赤字の顧客に対して安値で一生懸命サービスを提供しているだけかもしれないのです。

 

私はBtoBの経験が長く、経営や購買の現場で多くの企業や個人を見てきましたが、「自分がやっている事業の価値は何なのか」「自分のやっている事業の儲けの仕組みは何なのか」について、理解が十分でない方は驚くほどに多いです。特に大企業の方は、これらをしっかりと理解しなくても強固な仕組みで仕事がまわるからこそ、却って考えていない、考えられないケースが少なくありません。もちろんこれらは案外難しいテーマで私も自分で事業を起ち上げながら日々自問していますが、これらのテーマを考え抜くにはMBA的なハードスキルが必要で、その理解が不十分で考える土台ができていない方も少なくないと強く感じています。

 

日本企業が抱える大きな問題のひとつは、この基本的な事業を見る際のハードスキルが、本来は獲得されているべき社員に十分に学ばれていないことです。ただ一方で、だからこそ日本の会社の経営にはまだまだ伸びしろがあると私は捉えています。これらの内容を本当に身につくプログラムを提供することが、当社の使命だと考えています。だって皆さん、無駄なことはやりたくないじゃないですか。どうせ働くなら、ちゃんと儲けて、余裕を持って生きたいですよね。

 

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なぜマネージャーには抽象的な思考力が求められるか

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年08月03日(木)

 

前回は、「考え方」を学ぶこと、「考え方」を指導することの重要性について触れました。今回は、このテーマに関連し、なぜマネージャーには抽象的な思考力が求められるかを説明します。

 

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「あ、そうか!」とひらめく瞬間、ありますか?

 

抽象的に考えられなければ指導ができない

ある営業部長の方から聞いた話をご紹介します。その方には、営業として優秀な部下がいました。しかし、その部下をマネージャーに昇格させることは難しく、営業部長は悩んでいらっしゃいました。なぜなら、その優秀な営業担当者は、論理的に考えることができなかったからです。

 

彼は営業としては優秀で顧客にかわいがられる「才能」を持っていました。ですので、営業成績は良かったそうです。しかし、上司への報告はいまいち不明瞭で何が起きているのか聞いてもよくわからないことがあり、教育との関係では後輩の指導がうまくできないということでした。なぜなら、自分がやっていることや考えを、論理的に後輩に伝えることができないからです。

 

ここで、「論理的に考えて伝えることができない」という課題には、ふたつの要素が含まれています。ひとつは、結論と理由をセットで適切に論証をすることができないという「論理力」の問題。もうひとつは、自分が実際にやっていることを一段高い視点からまとめること、考え直すことができない「抽象的思考力」の問題です。ここでは、後者をもう少し見てみましょう。

 

抽象と具体の思考のレベル

「抽象的に思考する」という表現は、抽象的でわかりにくいですので、具体例をあげます。例えば、Excelに数字を打ち込む際は右揃えでの表示が基本です。右揃えでなければパッと見た時に桁数をつかみにくいからです。Excelを普段使わない方でも、銀行通帳の記帳やインターネット・バンキングの画面などをイメージすればすぐにご理解いただけると思います。

 

では、後輩がExcelで数字を「中央揃え」で縦に順番に入力していた場合、どのような指導が考えられるでしょうか。

 

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違いは一目瞭然です

 

最も具体的な指導は「数字は右揃えで入力するように」です。これは、作業レベルの指示です。これに「なぜか」と理由を付け加えるわけですが、以下のレベルが考えられます。

 

1)右揃えにしなければ、桁がわかりにくいから

2)上記に加えて、人間はそろっている情報を無意識にひとかたまりの情報と捉えるので、相手に伝わりやすいから

3)上記に加えて、人間はわかりやすい情報に無意識にポジティブな感覚を持つので、数字で主張したいことが相手に承認されやすいから

 

上記の説明はいずれも本当ですので、いずれの説明をすることもできます。そして、読んでいただくと、1)から3)にかけて説明が抽象的になっていることがわかります。1)は非常にわかりやすいですが、2)はデザインの考え方で、3)は心理学の考え方です(もう一歩踏み込むと脳科学の領域ですが、そこまでは触れません)。これらはいずれも、「なぜ」という考え方を説明しています。

 

ここで理解いただきたい点は、どの考え方のレベルまで理解するかによって、応用の範囲が異なることです。1)は数字を資料にまとめる時にしか使えない考え方ですが、2)は資料作成一般に応用できますし、3)はさらに広くプレゼンテーションや日々のコミュニケーションの取り方、さらには服装のコーディネートにまで応用できる幅広い概念です。

 

優れたマネジメントになるためには抽象と具体の往復が求められる

教えるにせよ、自分の仕事に活かすにせよ、まずはこのような抽象的な考え方をできなければ、優れたマネージャーになることはできません。それは、ある時は自分の経験から考え抜くことです。例えば、異なる経験から共通して得られる教訓や、似ているけれども異なる結果を生んだ経験から何が差だったかを考えることは、自分の経験から一歩抽象的な考え方を引き出すことに他なりません。また、本や教育から学ぶこともできれば、友人との会話から考え方のインスピレーションを得ることもできます

 

ただし、本や教育などで学んだ考え方を実務で使う場合には、抽象的な考え方だけではだめで、それが具体的にどのように仕事あるいは作業に落とせるのか、具体的にイメージできなければなりません。具体化に自ら試行錯誤することで、本や教育から「借りてきた」考え方を自らのものとすることができます。そして、自らの具体的な経験と抽象的な考え方を往復することで、自分なりの「考え方」が出来上がっていきます。

 

指導という観点では、自分が考え方を理解した上で、相手に伝わるレベルで考え方を伝えることが重要です。新卒社員には「数字は桁が揃っていないとわかりにくいから右揃えにするのだよ」という指導で十分ですし、それ以上を伝えてもピンと来ないかもしれませんが、資料作成をバリバリこなす社員であればデザインの考え方まで知っておいてもらいたいところです。

 

また、ビジネスをリードするという意味では、日々の仕事をこなすフィールドから、自ら仕事を作り出したり仕組みを考えたりするフィールドに移るには、このような抽象的な思考が求められます。そして、優れたビジネスパーソンは、抽象的に本質を突くことが得意で、社会・経済の動きや異業種の動きから将来を予測し、自社のビジネスにヒントを得ることができます。

 

抽象と具体の往復は筋トレのようなもの

自分の場合、若い頃はどちらかと言えば抽象的な思考に考え方が偏っていました。それは大学で政治という「大きな」テーマばかり追いかけていたからかもしれません。逆に、新卒での法人営業は現場がすべての仕事でした。その後、投資銀行で企業分析や交渉を、現在は自社の経営を経験し、これらすべてのおかげで、今では抽象から現場まで一貫してイメージする力がかなりついたと思います(営業の現場経験も現在の自分に至る道のりで非常に重要であったことをここで強調したいと思います)。抽象と具体の往復は筋トレのようなもので、キャリアのマラソンを通じてずっと高めていかなければならないものなのでしょう。

 

最後に、今回のテーマと教育・研修の関係に触れます。「どのレベルの考え方で相手とコミュニケーションをとるべきか」は、相手の思考レベルによるため、本来は相手によって指導の仕方を変えることが望ましいです。優れたオン・ザ・ジョブ・トレーニングはそのような師弟関係です。しかし、多数の受講生がいる教育・研修では、さすがにテーラーメードのコミュニケーションをとることはできません。したがってポイントは、いかに受講生のレベルを合わせて最大公約数をとりやすくするか、いかに受講生にとって「ちょうど良い」思考のレベルで考え方を伝えるか、です。作業レベルの教育は広がりに欠け、脳科学の話は実務から遠すぎます。ここでどのようなレベル選択するかは、教育を設計する側の対象への理解度とアートなセンスが問われる部分です。ですので、同じテーマで教育・研修が企画されても、内容が同じということはあり得ません。設計者により、内容は間違いなく大きく異なります。

 

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学びと指導において重要なことは何か

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年08月01日(火)

 

前回は、学びにおけるタイミングの重要性を強調しました。それでは、正しいタイミングに何か必要なことを学ぶ機会があったとして、どのように学ぶのが効果的、指導する側からするとどのように指導するのが効果的なのでしょうか。学びと指導はコインの表裏ですので、ここでは指導の視点で見ていきます。

 

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指導の仕方はふたつ

前回と同様に就職活動を例に出して、学生から志望動機を見て欲しいと言われたとしましょう。その際に、指導の仕方はふたつあります。ひとつは、テニヲハを含めて直接書き換えてしまう方法。もうひとつは、読み手の立場から何に気を付けるべきか考え方を伝えて、問題点は指摘するものの、どうしたらいいかは示さないやり方です。

 

アウトプットに手を入れてしまうと

前者の利点は、時間がかからない、良いものがすぐできる、ということです。なぜなら、社会人経験豊かなあなたが書き換えてしまうわけですから、あっという間にできあがるはずです。職場での先輩と後輩を思い浮かべていただけば、ここでもふたつの対応がありうることがわかるでしょう。「書き換えたよ」と返して終わりのパターンと、「ここをこう書き換えたよ、なぜなら」と説明を加えてあげるパターンです。一般的に、後者の方が親切な先輩だと見なされます(笑)。

 

もちろん、説明をしないよりはした方がよいですが、説明をした場合でもあなたが直接なおしてしまった場合、相手の「なぜ修正されたのか?」「次は自分はどうしたら良いか?」への理解度は十分に高まらないことが多いです。なぜなら、人間というのは不思議なもので、説明を聞いただけではできるようにならない生き物だからです。これは私が授業をしていても強く感じるのですが、ビデオでひととおりの説明をしていても、授業での質問に答えらえる人は少ないです。スキルや考え方は自分で考えてアウトプットをしなければ、身につかないのです。

 

答えを教えないで根気よく指導すると

さて、もうひとつの答えを示さずに考え方だけを示して、自分で試行錯誤してもらう指導法。これは、非常に時間がかかります。かつ、相手がなおした内容がまたあなたの眼鏡にかなわないかもしれません。また、指導の仕方も非常に難しいです。答えは教えず、しかし、相手が考えられるぐらいにガイドラインを示す、というのは、なかなか難易度が高いです。

 

しかし、このやり方をとれば、相手はなぜ自分の書いた志望理由への評価が低かったかを考え、理由を理解した上で修正することができます。最大の利点は、志望理由の書き方のポイントや、読み手の気持ちを理解できるので、次に志望理由を書くときに同じ間違いを犯さないということです。

 

「考え方」を理解しており自走できるかが「頼りになるか」の大きなポイント

これは非常に重要なポイントですが、仕事においては「考え方」を理解しているかどうかで、その人が頼りになるかどうかに決定的に差がでます。1から10まで指示しないといけない人には、だんだんと何かを頼むがの億劫になってきます。頼むのも時間をとられるし、頼むことを考えるという作業はあなたの思考エネルギーを奪うからです。頼りになるのは、自分で考えて自走できる人です。多少わからないところがあっても、「ここまではこう考えたが、ここがわからないので教えて欲しい」と言ってもらえれば、1から10まで指示をしなければならない人に比べると圧倒的に安心感を持って「一緒に」仕事をすることができます。

 

ただ、考え方を教えるのは時間がかかって大変です。ですので、どうにも明日の朝までに片づけなければいけない仕事がある、という状況では、そこまで手がまわらなくても仕方がありません。しかし、長い目で見れば、考え方を教えて人を育てることができるかどうかで、職場の戦力が充実するかは決まります。

 

「考え方」を、学ぶ、伝える

人材育成をしない職場に明日はなく、それは「考え方」をどれだけ伝えることができ、人を育てられるかにかかっています。というわけで、今回の結論は、教える際には「結論」や「作業の仕方」だけを伝えるか、「考え方」を教えるか、があり、後者の方が時間もかかるし大変だが、長い目で見ると人材育成には避けて通れない道、となります。

 

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学びにおけるタイミングの重要性

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年07月31日(月)

 

プリンシプルズ代表の藤波です。私は投資銀行でM&Aの第一線で働いていましたが、約1年前にMBAレベルの実践的なビジネス教育の会社を起業しました。「教える仕事」ははじめてでしたが、教えること、学ぶことについて、未経験だからこそ試行錯誤をして多くのことを学ぶことができました。実践を通じて考えたことについて、いくつかご紹介をしていきたいと思います。

 

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今回のテーマは、「タイミング」です。研修の内容が社員に届かない、授業を学生が熱心に聞かない、ときにはあなたのアドバイスが部下に響かない、これらには多くの場合において共通するいくつかの理由があります。その中で最も重要なことは、相手が内容を受け入れる準備ができているか、正しいタイミングか、ということです。

 

キャリアについての優れた考え方は多くの書籍にまとめられている

わかりやすい事例として、キャリアや就職活動のお話をしたいと思います。私は一時期、キャリアの考え方について文献を集中的に読みました。世の中に、優れたキャリア・アドバイザーが少ないような気がしたので、そもそもの考え方をしっかりと学んでみようと思ったのです。

 

その結果、キャリアについての優れた考え方は、だいたいのところ確立されていると私は結論づけました。この不確実な時代に「え!」と思われる方もいるかもしれませんが、世の中には、研究者にも実務家にも「良いキャリアを歩むためにどうしたら良いか」「仕事を通じて幸せになるには」というテーマについて人生をかけて取り組んでいる人が山ほどいるのです。

 

例えば、リクルートワークス研究所の大久保幸夫氏の『キャリアデザイン入門[I]基礎力編』は非常に優れていると思います(最近、第2版が出たようです)。キャリアを探索する筏(いかだ)下りと、ある程度の専門を決めて登る「山登り」の例えなどは、非常に明確かつ有用です。

 

もっとカジュアルな本では、例えば同じくリクルートでエグゼクティブ・サーチのお仕事をされている森本千賀子氏の『HONKI SWITCH ON 本気になれば人生が変わる!』も良い本です。自分が熱意を燃やせる仕事に就くことで変わる人と会社の事例が豊富に取り上げられています。

 

米国で著名なキャリアの本はリチャード・ボウルズ氏の 『適職」と出会うための最強実践ガイド』です。自分に合った仕事に出会うためには、というアプローチでパラシュートに色分けしたりするのですが、内容の本質はご紹介した二冊と同じです。

 

その他に、多くの本や記事で紹介される「一定水準を超えると年収よりもやりがいが幸せを感じるには大事」という説も、社会心理学では定説とされている他、私の周りの人たちを見ても違和感がなく、まあそうなんだろうなあ、と思います。キャリアの本は流行り廃り含めて多くありますが、このような「幹」の理論でお目にかからない新しい主張がなされることは極めて稀です。

 

以上で申し上げたいことは、キャリアで幸せになりたいのであれば、知っているべき考え方は本にだいたい書いてあり、特に奇をてらったことは何もないということです。これは、キャリアと人生は人それぞれであるものの、人と仕事の関係はわりとシンプルということに起因するのかもしれません。

 

なぜ、就職活動中の学生へのアドバイスは徒労に終わることが多いのか

さて、ここで就職活動中の学生を例にしましょう。これまた一時期、私は就活中の学生さんに積極的に会って、人生相談に乗ったり、キャリアのアドバイスをしたりしていました。その時に、キャリアについての大事な考え方を、学生さんにもわかるような言葉で、できる限り体系的にお話するように心がけました。学生さんに「これらの本を読んだらいいよ」と伝えるのはあまりに不親切かつ学生さんも忙しいだろうから、せめてかみ砕いて説明しようと思ったわけです。

 

しかし、その時にお話しした内容の99%は、学生さんに伝わっていなかったと思います。伝わったか伝わらなかったかは、相手の表情や受け答え、そしてその後の行動を見ていればわかります。なぜ伝わらないか?というと、理由のひとつは、アドバイスをしたタイミングが相手にとって正しいタイミングではないからです。

 

例えば、「自分の性格は簡単には変えられないので、性格に合った仕事をした方が幸せになれる」というアドバイスをしても、「性格に合っていない仕事をした経験」がないと、なかなか伝わりません。そこで、授業や部活など、相手にひきつけた例えで話をするわけですが、最後は「そもそも社会人として働いたことがないので仕事で求められることがわからない」というモヤモヤがあるので、やはり伝えるのは至難の業です。

 

自分でやってみて失敗した後が一番アドバイスの効果がある

では、いつがアドバイスをする効果的なタイミングかと言えば、それは相手が失敗した時です。例えば、面接指導で最も効果があるのは、「いけると思った面接がダメだった後」です。その瞬間は、「なぜ駄目だったのだろう」「次は失敗できない」という思いが強いので、学生さんはアドバイスを真剣に聞きますし、行動も変わります。

 

これは、仕事でも同じです。新入社員の指導で効果が最もあるのは、「あらかじめ指導したことを、新入社員が守らず失敗して、もう一度指導したとき」です(笑)。やんちゃな新入社員も、この時ばかりは「言われたことを忘れていて失敗した」という負い目と、「確かにアドバイスどおりにした方がいい」という思いがあるので、行動を変えます。

 

なお、先ほどのキャリアの場合は、「このキャリアは自分に合ってなかったかも…」と実感できるのは働き始めてしばらく経ってからなので、気づいたら時すでに遅しとなりやすいです。学生さんが相手のキャリア・アドバイスの最大のハードルは、そもそも学生さんは社会を知らないことであり、これは「学生さん」である限り、覆せないと思います。したがって、第二新卒で仕事を変えることを前提に、会社も学生も就職活動・採用に取り組むのが、社会として雇用のミス・マッチを防ぐという意味では最も合理的というのが私の考えです(なお、長期インターンをすればミス・マッチが減るという考えがありますが、米国の学部生を見ていると、効果がすごく期待できるとは私は思いません)。

 

研修も正しいタイミングで行うことが大事

私が事業とする企業研修においても、この「正しいタイミング」で行うことは、研修の効果を最大化する上で非常に重要だと思います。例えば、新入社員研修を入社直後に数か月単位で行う企業がありますが、そのやり方が最適かは検証が必要です。仕事をする上で最低限の内容は多少効率が悪くても事前に研修が必要でしょうが、それ以上の研修は、現場を経験して、「自分がいかにできないか」を知り、「実際にどんなことが仕事で行われているか」 を少しでも見てからの方が、圧倒的に効果が出ると思います。ただし、「最低限の内容」には、仕事によって差があるでしょう。営業であれば、ビジネス・マナーとパソコン・スキルで十分でしょうが、エンジニアの場合は基本的なプログラミングはできないとさすがに現場に入ることすらできないでしょうから。

 

より難しいのは、年次や役職に基づく研修です。特に年次は、人によって、仕事内容も成長スピードも異なるので、ただ集めて研修をすると「同窓会」で終わってしまう可能性があります。それぞれの人が自らの課題意識に基づいて研修を「選択」する手あげ式の方が、本当に参加者に役立つ研修という意味では望ましいでしょう。

 

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働き方改革は生産性競争の号砲(1)~人材育成への影響

カテゴリ: キャリア・教育 作成日:2017年07月12日(水)

 

先日、ある会社の若手社員の方を対象にビジネス・スクールのことやキャリアのことをお話しをする機会があり、その中で働き方改革は生産性競争の号砲というお話をしました。

 

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人にとっても会社にとっても最も希少な資源は時間

 

成長には仕事の質と量が必要

自分のことを振り返ってみると、これまでよく働いてきました。最初の会社でも遅くまで働いていましたし、投資銀行でも遅くまで働いていました(現在も、世間一般よりは長く働いていますが、若いときほどの労働時間ではありません)。一方で、自分が何かのスキルを身につけたり、思考が大きく成長したタイミングは、そのようによく働いた時だったと思います。結局のところ、成長には質と量の経験が必要で、それなりの量の良い仕事に、良い上司や同僚とともに取り組み、自分に負荷をかける期間が、成長のためには必要ということです。

 

ただ、同じ経験を若い人にお勧めはまったくしません。ずいぶんと昔の話ですが、平日は午前2時まで働いて休日出勤する生活を2ヶ月ぐらい続けると、だんだんと生気がなくなってきて世界がモノトーンになってきます。歩くのも面倒になってくるのでやたらとタクシーに乗りたくなったりとか(笑)。これはまったくお勧めできるものではありません。単純に不健康で寿命が縮みます。

 

インプットの仕方を変えずに働く量に制限がかかると

しかし、働き方改革により労働時間にキャップがかかると、「よくわからないから時間でカバー」ということができなくなります。加えて、そのように一時的に負荷をかけて成長するということもできないわけです。成長のために質と量が必要ということは、普遍的な真理と言えるので、すでに実力がある人は効率よく働けばハッピーでしょうが、これから力をつける人はどうしましょうという話になります。また、中堅層も時間を意識するようになるので、若手社員への指導(OJT)に割ける時間は必然的に減少するでしょう。若手社員にとっては、量だけでなく、先輩から学ぶという意味での質にもキャップがかからざるを得ないわけです。

 

それでも成長をしたいのであれば、それは業務外で自分に自分を投資するということになります。私がやっているビジネス・スクールという事業には、そのようにOJTで支えられなくなった会社内の教育ニーズを受け止めるという強い意義があると考えています。

 

働き方改革は日本企業の人材育成力を損なうリスクを内包している

よりマクロな視点で言えば、働き方改革は日本企業を弱くする危険があると思います。雇用の専門書には、成果主義の導入により個人業績が重視されるようになった結果、OJTが減少して日本企業の競争力が弱まったという記述がしばしば出てきます。働き方改革において「業績も仕事のやり方も変えずにとにかく早く帰れ」と命ずるのは無理な話ですが、仕事のやり方を変えて成果を出して早く帰るようにした場合であっても、OJTの減少による若手社員の育成スピードの低下という課題は容易には解決できないと思います。結果として、社外における教育・研修事業へのニーズは高まるはずです。

 

さらに考えを進めると、働き方改革は日本企業の採用慣習が欧米型に変化するひとつのきっかけとなる可能性があります。日本企業の新卒社員のポテンシャル採用は、これはこれで一定の合理性がありますが、社内でじっくりと育てられることが前提となったシステムです。とにかく成果を決まった時間であげられる人でなければという話になれば、採用時点で業務に関連するスキルをどれだけ身につけているかを問われる採用スタイルに徐々に日本企業が移行してもまったく不思議はありません。

 

OJTの役割の縮小は育成の外部化を招く

冒頭にご紹介した説明会では若い方へは「早く帰って毎日飲み遊んでいるだけだと10年後に苦労するぞ」というメッセージを結論としてお伝えしました。より広く社会人の皆さんへは学び続けることの大切さを、企業の経営者と人事の方には人材育成への取り組み方を抜本的に改める必要が早晩出てくることをお伝えしたいと思います。

 

つまるところ、行きつく先は企業による人材育成の外部化の進行であり、社員個人が自分の成長により責任を持たなければならない社会の到来です。当社としては、そこでしっかりと社会に貢献できるよう、本当に身につくビジネス教育を実践してまいりたいと思います。

 

※2017年8月7日に内容を一部修正しました

 

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議決権行使助言会社とは

カテゴリ: 会計・ファイナンス 作成日:2017年06月20日(火)

 

Newspicksで議決権行使助言会社に関する記事を見かけました。

 

【深層レポート】総会屋に代わる火種。野村證券「仁義なき戦い」

https://newspicks.com/news/2311788/body/?ref=index 

 

議決権行使助言会社とは、機関投資家が投資先企業の株主総会で議案に賛否を表明するにあたり、参考としてもらうレポートを配信する会社です。ISSとグラスルイスが有名です。

 

これらの会社の顧客は、機関投資家です。特に、欧米の機関投資家は、これら議決権行使助言会社のレポートを参考にすると言われています。機関投資家は株主総会で議案に賛否を表明しなければなりませんが、投資先の企業は非常に多く、個別の議案を十分に吟味するリソースが自社にはないため、議決権行使会社のレポートを参考にします(意地悪な言い方をすれば、あまり個別議案の吟味にリソースを割くインセンティブがないので、議決権行使助言会社に判断を「丸投げ」しています)。

 

議決権行使助言会社は、助言をするだけ…とも言えますが、それなりに機関投資家に影響力があるので、個別の議案になぜ賛否を表明するのか、アカウンタビリティが機関投資家や株主総会を開催する企業から求められます。そのため、議決権行使助言会社は、どのような考え方で議案の賛否を判断するか、各社のホームページでガイドラインを公開しています。例えば、日経ビジネスの以下の記事は、直近で変わったISSとグラスルイスのガイドラインについて解説しています。

 

ISSとグラスルイスの「新助言方針」とは

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/skillup/15/275626/012000023/

 

Newspicksの記事の中で、「議決権行使助言会社は個別の議案の背景をきちんと理解しているのか」という趣旨のコメントが出てきますが、議決権行使助言というビジネスが構造的に抱える問題は、株主総会が一時期に集中する場合、十分なスタッフを手当てしにくい点です。日本企業の場合で言えば、日本企業の株主総会は6月に集中するので、日本企業を担当する議決権行使助言会社にとって5月から6月は超繁忙期です。しかし、超繁忙期に合わせてスタッフを十分に配置すれば、他の時期はやることがなく人件費がかさむことになります。

 

したがって、議決権行使助言というビジネスのキモは、いかに少人数で顧客である機関投資家からの質問に耐えうる水準の助言レポートを発信するかという点にあります。よって、議決権行使助言会社のガイドラインは、機関投資家や企業に対する説明責任を果たすと同時に、このガイドラインに沿って限られた人数である程度は機械的に判断するからある程度それは勘弁してくださいねというエクスキューズの役割も担っていることになります。また、議決権行使助言会社としては、ガイドラインに反する助言を出そうとすると、個別事情を丁寧に理解して機関投資家に説明を尽くさないとならないので(面倒ですから)、なるべくガイドラインに沿って助言を出そうという強いインセンティブが働くことでしょう。

 

このような構造を考えると、自社の意に反するガイドラインを出されてしまった時点で、議決権行使助言会社の意に反することをしようとしている会社にとっては負け戦に入っているということになります。議決権行使助言会社の行動はグローバルなコーポレート・ガバナンスのトレンドに沿っているので、そもそもコーポレート・ガバナンスのトレンドにおいて日本としての意見をはっきりと打ち出すこと、さらに日本市場向けのガイドラインの作成において日本の実情に合わない内容が入り込まないようコミュニケーションをとることが必要なのでしょう。おそらくこのようなことに取り組んでいる方も経団連や学会などにいらっしゃるのではないかと思いますが、グローバルな規範がビジネスにどのように影響を及ぼしているかという一つの例と言えるかもしれません。

 

ところで、Newspicksのタイトルでは、議決権行使助言会社が総会屋と並べられていますが、アクセスを集めるためとはいえさすがにこのタイトルはいかがなものでしょうか。議決権行使助言会社が、日本のコーポレート・ガバナンスの改善に一定の役割を果たしていることは明らかです。議決権行使助言会社との対話を通じて、日本のコーポレート・ガバナンスが健全に発展していくことを期待したいと思います。

 

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Schooで新入生向けのオンライン授業を開催

カテゴリ: プログラム 作成日:2017年05月12日(金)

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昨日、Schoo「頼られる新入社員になるために今すぐ身に付けたいこと」というテーマでオンライン授業を行いました。柔らかいテーマでしたが、いわゆる新入社員研修の次に必ず仕事で必要となる「目的思考」「なぜなぜ思考」「想定力」「やり切る力」というテーマについて、解説をさせていただきました。

 

Schooの特徴は、チャットや「なるほど」ボタンなどを用いて、生放送で視聴者参加型の授業を提供しているところです。人数は異なりますし、システムを介しますが、わたしの普段の授業のインタラクティブなやり方と思想はまったく同じですので、違和感なくスムーズにやらせていただくことができました。スタジオからの投げかけにたいして、多くのご参加の方からコメントをいただくことができ、非常に感謝しています。冒頭の写真は、スタジオで参加いただいた江川さんとの放送後の写真です。江川さん、スタッフの皆さん、貴重な機会を経験させていただき、ありがとうございました。

 

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これは私が演習のひとつを解説している際の放送された画面です。ちょっと、政治家っぽい!?ちなみに、別室で放送を見ていてくれた当社の社員によれば、授業中、私が話しすぎで、江川さんは先に進みたそうだった、そうです。そうですね、普段の授業のように、熱弁して話し過ぎたかもしれません。規定時間を少しだけオーバーしてしまいましたし。すみません。

 

常々感じているのですが、「仕事ができる人」と「仕事ができない人」、あるいは「頼りになる人」と「頼りにならない人」の大きな違いは、「きちんと考えられる人かどうか」と「やるべきことを出来る人か」に、かなりの程度よります。そのような人であれば、あとは経験を積めば自ずと頼りになる人になることができますし、このふたつの思考と行動がとれない人は、いまいちパッとしません。

 

ここから、論を展開しようとすると、いろいろな方向に進むことができます。仕事で成長するための仕事論、どうやって考え方を教えるかという教育論や研修論、どうやって考えられる人かを評価する人事評価の問題、なぜ日本企業はポテンシャル採用をするのかという雇用システムの問題、やるべきことをやるにはという心理学の論点…。新入社員向けとして非常に簡単な例題を設定してお話ししましたが、「考えられること」「やるべきことを出来ること」は、それだけ深さと重要性のあるポイントです。ご覧いただいた方の、何らかのご参考になれば幸いです。(なお、録画はSchooの有料会員になると後日視聴できるようです)

 

余談ですが、生放送のスタジオを拝見させていただいたことも大変勉強になりました。いずれ、私の授業も機材をグレードアップしたい!それでは、これより現在開講中の財務会計の資料、近々に正式開講予定の論理学とコミュニケーションの資料を作ります。皆さま、いずれまた教室でお会いしましょう。

 

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翻訳に参加した『人事と組織の経済学・実践編』が刊行されました

カテゴリ: その他 作成日:2017年04月24日(月)

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私が翻訳に参加した『人事と組織の経済学・実践編』が、日本経済新聞出版社から発売されましたので、お知らせさせていただきます。私は3人の訳者のひとりで、お誘いいただいてこのプロジェクトに参加しました。他の訳者はビジネスにおいても英語においても経験豊富な方々で、私はプロジェクトの中で恥ずかしく思うことの方が多かったのですが、無事に出版にたどり着き大変嬉しく思います。ただ、MBA向きで学術書ではないとは言え、人事経済学のテキストを翻訳する作業はとても大変で、もう一度はやりたくないというのが正直なところです(苦笑)。

 

それはともかく!本書は、スタンフォード大学のラジアー教授と、シカゴ大学のギブス教授の共著で、「人事経済学」を、さまざまな現実の事例に適用し、そのエッセンスを難しい数式を使わずに学べるように書かれています。この本の優れている点は、ふたつあると思います。ひとつは、人事経済学のコアな考え方を、非常にシンプルに学ぶことができる点です。これは、私がシカゴ大学での学びで強く感じたことでもあるのですが、本当に優秀な研究者は、主題の本質を単純化した式や事例分析で驚くほど鮮やかに聞き手に伝える能力に優れています。この本でもそのような米国の研究者の優れた教え方が貫かれており、経済学を勉強したことがなくても、本書を通読することで経済学的な思考で人事と組織をどのように読むことができるか、見方を養うことができるでしょう。もうひとつは、本書が非常に体系的に書かれているという点です。人事と組織は、働いている人であれば誰もが感じるところのある、世界共通の話題ではないかと思います。ですので、本書で扱われているトピックのひとつひとつは、どこかで自分が話題にしたことがあったり、あるいはニュースや論説などで読んだことがあるような内容かもしれません。しかし、本書では、人事と組織の全体像が採用、育成から評価や退職まで体系的に描かれているため、本書を通読することで人事と組織に論理的にアプローチする際の考え方を包括的に学ぶことができます。

 

論理的に人事にアプローチするとはどういうことでしょうか?例えば、本書で一番はじめに描かれるトピックは、そこそこのパフォーマンスをあげる可能性が極めて高い候補者Aと、物凄いパフォーマンスをあげる可能性もあるが使い物にならない可能性もある候補者Bの、どちらを企業は採用すべきかという内容です。詳細は本書に譲りますが、簡単なシミュレーション(頭の体操)をしてみると、結論は「社員を容易に解雇できるのであれば、候補者Bを採用する方が企業にとって合理的」となります。また、試用期間の利用や報酬のインセンティブ設計の工夫により、企業にとって候補者Bを採用するリスクを減じてよりリターンを引き出すことが可能であることが、論じられています。はじめてここまで読んだ時に、私は本から顔をあげました。理屈で丁寧に考えれば、著者が主張していることはそのとおりだ。ということは裏を返せば、社員を解雇するのが難しいのであれば、企業はリスク回避的に候補者Aを採用するインセンティブを持つということだ。そうか、それが日本企業のやっていることなのか…。

 

これはほんの一例ですが、本書には採用から退職まで、このような分析が満載です。興味を持たれた方は、是非本書を手に取ってみてください。大変勉強になること、請け合いです。ただし!学術書ではなく平易な語り口とはいえ、本書は「超簡単」ではありません。また、本書は576ページもあり、ベッドで横になりながら読んでいると、本の重さで腕が痛くなり、さらに超ロジカルな内容にまぶたが重くなってくること請け合いです。是非、強い好奇心と覚悟を持って机に向かって読み始めていただきたいと思います。私も、もう一度通読したいと思っています!…が、見本が届いてから、まだ一度もしっかりと開いていません!威圧感があるので、本棚に記念に飾ってあります…。興味のある方と、読書会でも、しようかな?

 

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新社会人(と手垢のついた社会人)に送る言葉

カテゴリ: 経済・社会 作成日:2017年04月03日(月)

Chaplin Modern Times

 

通勤時に九段下駅を通るのですが、先週までは武道館で卒業式に出席する学生の、今週は武道館で入学式に参加する学生の姿を多く見ることができ、少し懐かしい気持ちになります。また、Facebookや新聞でも、新社会人へのメッセージをいくつか見ました。そうか、もう4月なのですね。せっかくなので、社会人として働き始めた時から私がずっと意識していることを、新社会人(と手垢のついた社会人)へ送る言葉としてしたためてみたいと思います。

 

1. 悪いことをしない

いきなり何のことか、と思うかもしれませんが、社会には悪い人がいます。それは、狭い意味では犯罪を犯すということ、広い意味では会社やお客さんに対して「本当にいいのかな?」と思うことに、上司の指示で手を染めるということです。これは、絶対にやめましょう。なぜなら、もしもあなたが犯した「悪いこと」が明らかになった際に、上司や会社はあなたを守ってくれないからです。昔は、会社が指示した悪いことが明らかになった時に、表向きは反省しながら、会社は悪事に手を染めた社員を守ってくれました。しかし、もうそういうことはできない時代です。あなたの人生をパァにして、会社や上司のために尽くしても何もいいことはありません。悪いことはとにかくやめましょう。

 

これは、私が社会人になる前に三井物産の「国後島ディーゼル発電施設事件」を見ていて何よりも強く感じたことですが、今日においても、東芝など事例をあげれば枚挙にいとまがありません。また、今日においてはこれをさらに、「会社や上司に滅私奉公しても意味がないと知る」と言い換えてもいいでしょう。上司が何を言おうが、あなたがうつ病になっても、上司は責任を持ってくれません。会社がつぶれて路頭に迷っても、上司も会社も責任をとってくれません(とりたくても、お金がないので、責任がとれないのです)。究極的には、自分の身は自分で守るという強い意識を持ちましょう。

 

2. 理想を持つ

なにごとにおいても、理想(もしくは目標)を持ちましょう。理想なくして、理想にたどりつくことはありません。若いうちは、一日も早く仕事ができるようになる、深夜残業をしないようにする、先輩の背中を見ながらどんな小さなことでも目標になるでしょう。より中期的には、年収〇〇は目指したい、ワークライフバランスを両立させたい、世界で活躍したい、子どもとの時間を十分に持ちたい、地方の実家に帰りたい、なんだって目標になります。そして、もっと大きく理想を持つなら、社会の〇〇の問題を解決したい、総理大臣になりたい(!)、世界平和を実現したい(!!)、なんだって理想になります。

 

大事なことは、理想を持つことです。理想がなければ、あなたは日々の仕事と人間関係に忙殺され、いつしか人生を漂流させることになります。忙しい毎日の中で、ふと立ち止まって理想や目標を思い直すことを大事にしてください。

 

3. 現実は理想とは異なることを理解し行動する

あなたがどんなに会社や仕事を理不尽に思っても、あなたはまだ何もわかっていない新人であり、あなたの先輩や上司はあなたよりずっと仕事のことも社会のことも人生のことも知っています。日本で現実に会社や社会を動かしているのは、経験豊富な諸先輩であり、緻密に構築された企業の論理であり、さらに法律や社会の慣習があります。あなたが世界平和を目指していても、現実には自らの主張を実現するために女性や子どもを利用するテロリストがおり、世界の秩序はアメリカの軍隊が維持しており、人間も動物ですから他人よりも自分が大事な生き物なのです。現実を知らずに理想だけを主張することが許されるのは子どもだけです。大きな理想であれ、小さな理想であれ、何かを実現するには、社会と世界のことをよく知らなければなりません。まずは、謙虚な気持ちで何でも吸収することを心がけましょう。

 

新社会人には、まずは「悪いことをしない」と「現実は理想とは異なることを理解し行動する」の重要性を強調したいと思います。人生の先輩からしっかり学び、しかし無理はするなよー。これがメッセージです。

 

しかし、手垢のついた社会人には、「理想を持つ」の重要性を何よりも強調したいと思います。あなたは、何をしたいのか?何を得たいのか?何のために生きているのか?これを問うことなく、現代において自分の人生を組織や社会から取り戻すことはできないのですから。

 

新社会人へのメッセージとして、もっと基本的なことを書くこともできます(何でもメモをとれ、遅刻するな、とか)が、そのようなことについては優秀な方が多くメッセージを発しているようなが気がしましたので、少し大きく構えた人生訓をしたためさせていただきました。

 

若いみなさんは前途洋々です。とまどいもあるでしょうが、すぐにスーツも馴染むようになりますよ。働くのは、結構楽しいものです。社会人の世界へようこそ、おめでとう。

 

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第3期コースの終了と第1回PBSフォーラムの開催

カテゴリ: プログラム 作成日:2017年03月31日(金)

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財務会計・ファイナンスコースの3期目も、そろそろ終了です。今回は3か月間のコースでしたが、あっという間でした。

 

最近、企業研修の営業時に、今期のパワーポイント資料(4分割両面)と授業で用いたスプレッドシートをすべて印刷したファイルを持参しています。改めて見てみると、なかなかの分量です。かつ、これはビデオ講義の資料分のみで、授業で扱っている追加スライドは印刷していません。これらをすべて、丁寧に勉強していただく受講生の皆さんは本当に大変だと思います。なお、2か月でやっていた第1期・第2期と比べると、今期の資料のボリュームは1.3倍ぐらいになっています。第3期の皆さん、参加いただいてありがとうございました。

 

また、3月22日に、過去のコース参加者を対象に、「第1回PBSフォーラム」と銘打ったスピーカー・イベントと懇親を開催しました。テーマは「経済やマーケットの情報収集と分析のコツ」と「成長企業と安定企業の見分け方」で、冒頭に私から短いプレゼンテーションをした後、過去のコース参加者である投資家の方にじっくりとお話しと質疑をしていただきました。仕事においてだけでなく、個人で投資を考える際にも役立つ内容であったと思います。このようなイベントでは、参加者の理解のレベルに大きなバラツキが起きやすいのが、話し手やイベント企画側のやや専門的なお話しもいただきましたが、参加者はみな過去の財務会計・ファイナンスコースの受講生ですので、全員に理解のベースがあった上で質疑ができ、理解を深められるのがとても良かったと思います(私も、適宜補足の説明や質疑をさせていただきました)。飲み会も、ざっくばらんに大変盛り上がりました。

 

今後、プログラムへの参加者が増えるにしたがって、「プロの学び」をテーマにこのようなイベントを継続的に実施していきたいと考えています。財務会計・ファイナンスコースの改良・改編と、さらなる提供コースも準備中です。引き続き、どうぞ宜しくお願いいたします。

 

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